●平成24(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

  本日は、『平成24(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年5月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130604102110.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標法50条1項に基づく不使用取消審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、本件商標の使用の有無についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、裁判官 新谷貴昭)は、


『2 本件商標の使用の有無


(1) 使用標章は上記1(1)【本件標章】のとおりであるところ,本件商標における文字に「ALL」と「STATE」の間に空白がないが,その文字は文字枠およびアメリカ合衆国の地図をあしらった図形部分を凌駕して独立の標章と認識し得るものであり,社会通念上本件商標と同一の商標と認められる。また,使用商品は「革製ジャケット」であり,本件商標の指定商品である「被服」の範ちゅうの商品と認められる。


(2) 商標使用は,商標権者が登録商標管理として入念に配慮しなければならず,その関係の内部資料を保管しているべきであって,たやすく立証可能な事実であるのに,被告はネットの掲載などの断片的な証拠を提出するのに甘んじている。


 しかし,上記1認定の各事実を総合すると,レイラニ社は「2012−02−06」すなわち平成24年2月6日に「ALL STATE」の文字を含む本件標章を取り入れた革製ジャケットについてネット上で広告・宣伝したことはかろうじて認めることができる。同社のこの行為自体は,商標法2条3項8号に規定する「商品に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するというべきである。なお,アメーバブログの登録者である会員が個人であってもリンク元は当該個人の所属する会社のショップサイトであるから,リンク元のショップで販売している商品の広告・宣伝をしていることに何ら変わりはない。


 商品の宣伝・広告を目的としたショップスタッフによるブログが利用規約に違反するとしても,それは利用者と管理者の間の問題にすぎないから上記認定を左右しない。


(3) なお,上記1(4)の認定事実によれば,在庫商品の「ALL STATE」の革製ジャケットに本件商標が付されていたのか不明であり,商標法2条3項1号に該当する使用の事実があったか必ずしも明らかではないといわざるを得ない。


 ただし,上記1(1)の認定事実によれば,レイラニ社の在庫商品として刻印,下げ札等により商品に本件商標を付していたことがうかがわれ,かかる行為自体は,商標法2条3項1号に該当するといってよい。もっとも,その時期は特定されておらず,本件審判請求の登録前3年以内であるか否かは必ずしも明らかではないといわざるを得ない。


 また,レイラニ社の本件商標の付いた在庫商品の数は平成23年7月10日分しか判明しておらず,その前後の変動は不明であり,在庫商品が実際に販売に供されて譲渡されていたかもまた不明といわざるを得ず,商標法2条3項2号に該当する行為があったとは認められない。


 以上のとおり,本件商標使用の事実立証は極めて雑ぱくなものといわざるを得ないが,当裁判所は,上記(2)におけるただ1回の広告・宣伝の事実だけはかろうじて認定が可能と評価したものである。

 と判示されました。