●平成20(ワ)38602 特許権 民事訴訟「無線アクセス通信システムお

 本日も、『平成20(ワ)38602 特許権 民事訴訟「無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法」平成25年4月19日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130513152208.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点(2)ウ(無効理由3〔実施可能要件違反1〕)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 東海林保、裁判官 田中孝一、裁判官 寺田利彦)は、


『4 争点(2)ウ(無効理由3〔実施可能要件違反1〕)について

(1) 本件特許権に適用される平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項は,「発明の詳細な説明にはその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない」と規定し,いわゆる実施可能要件を記載要件として要求しているところ,このように法が実施可能要件を要求する趣旨は,有用な技術的思想の創作である発明を公開した代償として独占権が与えられるという特許制度の目的を担保するため,発明の詳細な説明に当該請求項に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載を求めるというものと認められるから,実施可能要件を満たすためには,出願当時の技術常識からみて,当業者が,出願に係る発明を正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載がなければならず,その結果,所期の作用効果を奏することができるものであることを要すると解するのが相当である。


(2) これを本件についてみるに,前記3のとおり,本件当初明細書等の発明の詳細な説明と,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は,その技術内容に係る記載において異なるものではなく,したがって,本件発明における構成要件F2(本件構成)のうち,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,入トラヒックを交換システムの出口が送信する時刻を制御する技術的事項につき,出願当時の技術常識からみても,当業者がそれを正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載があるとはいえないから,本件発明は,平成6年法律第116号附則6条でなお従前の例によるとされる特許法36条4項の実施可能要件を満たしておらず,本件発明1及び2に係る特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。


 よって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。