●平成24(行ケ)10266 審決取消請求事件 特許権「自動パッケージピ

 本日は、『平成24(行ケ)10266 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「自動パッケージピックアップ及び配送に関するシステム及び方法」平成25年4月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130509105437.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、取消事由2(相違点1において,引用発明と周知技術2との組合せの容易性の判断遺漏,及び同判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香、裁判官 神谷厚毅)は、


『2取消事由2(相違点1において,引用発明と周知技術2との組合せの容易性の判断遺漏,及び同判断の誤り)について

(1)相違点1に係る容易想到性

 前記1(3)のとおり,「情報入力デバイス」として,甲2には,指紋,音声,顔の画像,網膜パターン等の読取装置のような「バイオメトリクス入力デバイス」が開示されており,甲3には,指紋,声紋,虹彩等の人証データ入力器のような「バイオメトリクス入力デバイス」が開示されている。


 これによれば,「情報入力デバイス」として,甲2の上記読取装置や甲3の上記認証データ入力器のような「バイオメトリクス入力デバイス」を用いることは,周知の技術(周知技術1)であると認められる。


 そして,このような周知技術1を通常の知識として有する当業者にとって,パッケージを受領(関連するロッカーを解錠)するために,利用者の確認及び認証を目的として,その利用者を識別するための情報を「ICカード7aの情報」として取得するか(すなわち「ICカード用リードライト7」を用いるか),又は「バイオメトリクス情報」として取得するか(すなわち「バイオメトリクス入力デバイス」を用いるか)は,必要に応じて適宜選択して採用できる設計事項にすぎないものというべきである。


 また,甲4の段落【0005】ないし【0007】の記載及び甲5の段落【0016】の記載に照らせば,バイオメトリクス入力デバイスからの識別情報に関して,識別及び認証情報を遠隔のセントラルホストデータセンターとの間で送信及び受信することは,周知の技術(周知技術2)である。


 したがって,引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用して,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。


(2)原告の主張について


ア原告は,引用発明と周知技術2は異なる技術分野に属するにもかかわらず,審決は,両者の組合せが容易であることを論理付けしていないと主張する。


 なるほど,バイオメトリクス入力デバイスからの識別情報に関して,識別及び認証情報を遠隔のセントラルホストデータセンターとの間で送信及び受信することについて,甲4に開示されているのは,ATMのような自動取引システムに適用された例であり,甲5に開示されているのは,カードレス施設利用システムに適用された例である。


 しかし,そもそも,認証技術は,取引の安全性確保等を目的として,各種技術分野,各種用途で使用され得ることは認証技術に接した当業者には自明であるから(この点は,乙6の記載からも裏付けられる。),周知技術2を引用発明の認証処理に係る技術として適用することは,何ら困難なことではない。引用発明が宅配ボックス装置の技術分野に属するものであっても,当該宅配ボックス装置の認証技術として,各種技術分野,各種用途で使用され得る周知の認証技術を適用できないとする理由はない。


 したがって,原告の上記主張は採用することができない。


イ原告は,引用発明に周知技術2を組み合わせることは,阻害事由が存在するか,少なくとも動機付けが存在しないと主張する。


 しかし,甲1には,原告が引用する記載(4頁左上欄10行〜14行)のほかに,「そして前記利用者Nと同様に,指定宅配業者M1のICカード7aをICカード用リードライト7に挿入して暗証番号をテンキー8で押すと,情報確認・中継装置D4で指定宅配業者M1が確認されると共に,…扉3cが開けられるようになる。」(4頁左下欄下から2行〜右下欄6行)との記載,「次に,前記の指定宅配業者M1と同様に予め設定契約を結んだ…等のサービス業者M3の配達方法…指定サービス業者M3のICカード7aをICカード用リードライト7に挿入して,暗証番号をテンキー8で打ち込むと,情報確認・中継装置D4により身元確認が行われると共に,…扉3cが開けられるようになる。」(5頁左上欄17行〜左下欄4行)との記載があり,これらの記載によれば,甲1には,利用者の身元確認が宅配ボックスBによって行われる例だけでなく,指定宅配業者や指定サービス業者の身元確認が情報確認・中継装置D4によって行われる例が開示されていることが認められる。


 そうすると,引用発明に周知技術2を組み合わせることについては,その動機付けがあることが甲1自体に記載されており,阻害事由が存在するとはいえない。

 したがって,原告の上記主張は採用することができない。

(3)小括

 よって,原告主張の取消事由2は理由がない。』

 と判示されました。