●平成24(行ケ)10428 審決取消請求事件 特許権「ラケットグリップ

 本日は、『平成24(行ケ)10428 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ラケットグリップの補助具」平成25年4月24日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130508112725.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(手続の不明確性)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳、裁判官 武宮英子)は、


『1 取消事由1(手続の不明確性)について

 原告は,審決が,本願の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし4,請求項6ないし8についての判断を記載しなかったこと,特許請求の範囲に記載された請求項の中で,請求項5のみを抽出し,拒絶の理由を通知することなく,これを本願発明と認定したこと,拒絶理由通知の理由とは異なり,かつ,審査基準に合致しない理由で,引用発明1及び2を組み合わせて,本願の特許請求の範囲の請求項5記載の発明と対比したことは,手続が不明確であり,違法である旨主張する。


 しかし,特許法は,1つの特許出願に対し,1つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて1つの特許が付与され,1つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。


 このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。


 このことは,特許法49条(平成23年法律第63号による改正前の同条),51条の文言のほか,特許出願の分割という制度の存在自体に照らしても明らかであるといえる。


 そうすると,特許出願に係る発明中に,特許法29条等により特許をすることができないものが存するときは,その特許出願は全体として拒絶されることとなり,この理は,審査官による審査においても,拒絶査定不服審判においても異なることはないと解される。


 また,本件において,審判合議体は,平成24年5月14日付けで本願発明は引用例1(拒絶理由通知書においては「引用文献2」と呼称されている。)に記載された発明である旨,及び,本願の特許請求の範囲に記載の請求項1ないし8に記載された発明は引用例2(拒絶理由通知書においては「引用文献1」と呼称されている。),引用例1等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を理由とする拒絶の理由を通知し(乙12),原告は,これに対し,同年6月28日付けで意見書(乙13)及び手続補正書(甲3の3)を提出したことが認められる。


 以上によれば,審決が,本願の特許請求の範囲に記載された請求項の中で,請求項5のみを抽出して判断を示したことが違法であるとはいえず,また,審判の手続に不明確性や違法があるとも認められない。


 したがって,原告の主張は理由がない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。