●平成24(行ケ)10360 審決取消請求事件 商標権「インテルグロー」

  本日は、『平成24(行ケ)10360 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟インテルグロー」平成25年4月18日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130419094724.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判請求の棄却審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、取消事由1(8号の適用の誤り)や取消事由2(11号の適用の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、裁判官 古谷健二郎)は、


『1取消事由1(8号の適用の誤り)について

 原告の略称である「インテル」が,原告の業務に係る商品(半導体集積回路等)の取引者・需要者を始めとして、相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたことは,審決認定のとおりである(甲13〜18,20〜51)。


 これに対し,本件商標は,「インテルグロー」の片仮名を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一体に表され,これより生ずると認められる「インテルグロー」の称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものであるから,一体不可分の造語として理解されるとみるのが相当である。


 したがって,本件商標は,その構成文字中に「インテル」の文字を有するけれども,一体不可分のものとして認識されるものであるから,「インテル」の文字は,本件商標全体の中に埋没していて,それのみが独立して把握されるものではない。


 したがって,本件商標は,原告を想起させるものではなく,8号の「他人の略称を含む商標」には当たらないとした審決の判断に誤りはない。


 原告は,表示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるから,一般世人は本件商標から原告の著名な略称である「インテル」又は「INTEL」を容易に想起すると主張するけれども,集積回路又は半導体以外の商品分野において,表示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるとは認められない。防護標章登録の事実から,当該標章が著名であることを推認することもできない。


 原告はまた,本件商標における「グロー」が「成長する」を意味する英単語として一般人になじみの深い語であることをもって,「インテル」の部分を「グロー」と分離して認識するというが,「成長する」に対応する英単語“grow”の発音が「グロウ」であることは一般人にとって常識であって(甲55),後記のとおり,被告が「グロー」に「成長」の意味を込めたとしても,「インテルグロー」から「インテル」が「グロウ」すると認識するものとは,一般的には推測しにくい。いずれにしても,「インテルグロー」が一気一連に称呼されるものであることは上記認定のとおりである。


 本件商標が8号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由1には理由がない。


2取消事由2(11号の適用の誤り)について


(1)本件商標は,「インテルグロー」の片仮名を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一体に表されているものである。

 また,本件商標は,これより生ずると認められる「インテルグロー」の称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものである。なお,乙16には,本件商標と同一の構成をもつ被告の名称について「より快適な住空間づくりと情報(INTELLIGENCE:インテリジェンス)の提供により,お客様の満足を喜びと感じ,企業として成長(GROW:グロー)していこう」との「真心をこめた」旨の記載があるものの,本件商標の構成態様だけからは,そのような意義を見て取ることはできない(上記1の説示参照)。


 そうすると,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分の造語として認識し把握されるとみるのが自然であり,その構成文字全体に相応し一連して「インテルグロー」の称呼を生じさせ,特段の観念を生じない。


 原告は,本件商標は原告の著名な略称である「インテル」を含むから,需要者・取引者が本件商標の「インテル」の構成部分を分離して観察することは,取引上不自然ではなく,本件商標の構成部分の一部である「インテル」が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,本件商標からは「インテル」の称呼を生じ,「インテル社が成長する」「インテルの製品が発展する」の観念を生じると主張する。


 しかし,本件商標中の「グロー」については取消事由1について判断した説示のとおりであり,本件商標は標準文字の片仮名文字をもってまとまりよく一体に表されているもので,上記のように一体不可分の語としてみるべきであるから,「インテル」が原告の著名な略称であることを理由として,一般需要者及び取引者が,本件商標を「インテル」と「グロー」に分離観察するものと認めることはできない。


(2)他方,引用商標は,単独の「INTEL」又は「インテル」の文字よりなるものか,特徴のある字体で「INTEL」の欧文字を顕著に表わし,その周りを切れ目のある傾いた楕円で囲んでなる構成のものであるから,引用商標からは,その構成各文字に相応して「インテル」の称呼を生じ,特段の観念を生じない。


(3)本件商標と引用商標との対比

 本件商標より一体不可分に生ずる「インテルグロー」の称呼と引用商標より生ずる「インテル」の称呼とは,「インテル」の部分において共通するものの,構成音数若しくは音構成において相当の差異を有するものであるから,明確に聴別することができ,本件商標と引用商標とは,称呼上,明らかに区別し得るものである。


 また,本件商標と引用商標とは,外観上,判然と区別し得るものであり,また,いずれも特段の観念を生じないことは上記(1),(2)のとおりであって,観念において共通するところがない。


 そうすると,本件商標と引用商標とは,類似するものということはできない。指定商品,役務の類否について判断するまでもなく,本件商標は11号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由2には理由がない。』

 と判示されました。