●平成24(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権「外科的インプラン

 本日は、『平成24(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「外科的インプラントおよび用器のための干渉を生成する有色コーティング」平成25年3月28日 知的財産高等裁判所 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130329090906.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(引用発明認定の誤り)および取消事由3(相違点1 の判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、裁判官 田邉実)は、


『3 取消事由1(引用発明認定の誤り)について


 ・・・省略・・・


ウ 刊行物1の記載(1頁左下欄4〜9行,2頁左上欄11行〜20行,2頁右上欄14行〜左下欄下から2行,2頁右下欄7行〜15行)によれば,刊行物1に記載されたコート層は酸化チタンを主成分とし干渉色を呈するものであると認められるところ,前記のとおり「酸化チタンからなり干渉色を呈する膜は透明にして無色である」ことは技術常識であるから,刊行物1におけるコート層が「透明にして無色の干渉色を呈する層」であることは,実質的に記載されているに等しい事項であるということができる。よって,これと同旨の審決の認定に誤りはない。


 なお,原告は,甲16に記載された発明は金属加工の分野であり,甲17に記載された考案は医療分野に用いるものではなく,医療用インプラントの分野の発明である補正発明とは技術分野が異なると主張する。


 しかし,酸化チタンからなるコート層が透明にして無色であることは一般的な技術常識であり,このことは技術分野に左右されるものではないから,原告の主張する技術分野の違いは引用発明の認定に影響を及ぼすものではない。


 ・・・省略・・・


(4) 以上より,審決の引用発明の認定に誤りはない。


5 取消事由3(相違点1 の判断の誤り)について

(1) 特開昭62−66850号公報(甲18)の7欄左上欄14行〜16行,特開平8−66404号公報(甲19)の段落【0025】,特表2002−540884号公報(甲20)の【請求項8】,特表2003−527923号公報(甲21)の段落【0077】,米国特許第5597384号明細書(乙4の1)の1欄4行〜7行,国際公開第03/026514号公報(乙5の1) の30頁8行〜11行(特表2005−503860号公報〔乙5の2〕の段落【0083】)によれば,外科インプラント及び用器をカラーコード化(色標識および特徴付け)することは,本件出願時において周知の技術事項である。


(2) 補正発明は,前記のとおり,外科インプラントや用器(例えば骨板,骨ねじ,ねじ回し)に用いられるものであるが,本件補正後の【請求項1】において「コーティング,特に外科的インプラントおよび用器の標識と特徴付けのため,ならびに外科的インプラントおよび用器のための拡散バリヤーとしてのものであって」,「前記コーティングが,インプラントまたは用器の表面に結合した,生体適合性があり」とされていることからしても,インプラントの具体的な適用部位については何ら特定されておらず,デンタルインプラントを排除するものではない。一方,引用発明は,前記のとおり,義歯床用金属部材に関する発明であり,刊行物1に「このような処理を施したチタン系金属を用いたデンタルインプラントは公知の陽極酸化法を用いて化成処理を行うことによって各種の色調を呈するデンタルインプラントとなる」(2頁左上欄6行〜9行)と記載されていることからすると,デンタルインプラント(人工歯根)に用いられるものである。


 ,そうすると,補正発明と引用発明とは,いずれも体内に埋め込まれる器具であるインプラントに用いられるという点で技術分野が共通しているといえる。


 そして,上記のとおり本件出願時において,外科インプラント及び用器をカラーコード化(色標識および特徴付け)することは周知の技術事項であり,引用発明も周知の技術事項もインプラントに着色するための技術という点では共通しているのであるから,インプラントの技術分野に属する引用発明におけるコーティングを,周知の外科インプラント及び用器におけるカラーコード化(色標識および特徴付け)として用いることにより,相違点1に係る補正発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得るというべきである。よって,相違点1 に関する審決の判断に誤りはない。


(3) 原告は,補正発明は,A)一定の層厚を有し,B)電気的に非伝導性または弱伝導性,すなわち誘電性であって,C)干渉を生成するために好適で,D)可視スペクトル全域にわたる干渉色を生成するために好適であり,E)前記干渉層が,耐食性であり,F)PVD法(物理気相成長法),CVD法(化学気相堆積法),スパッタ法により前記のインプラントまたは用器の表面にコーティングを施すことを特徴とするコーティングを意識しながら調整するという技術的思想をもつ発明であり,それらの全てを調整することを記載及び示唆している文献が存在していないにも関わらず,補正発明を容易想到であるとした審決は誤りであると主張する。


 しかし,補正発明の技術的思想は前記1のとおりであって,本願明細書に,補正発明が上記A)からF)を意識しながら調整することについての記載はなく,補正発明に関し,原告主張の技術的思想を認めることはできない。よって,原告の上記主張は採用することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。