●平成22(ワ)41231 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟

 本日は、昨日出された●『平成24(ネ)10065 不正競争行為差止請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成25年2月6日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130208114811.pdf)の一審判決である●『平成22(ワ)41231 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年7月4日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120723151852.pdf)について再度取り上げます。


 本件は、不正競争行為差止請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、不正競争防止法2条1項1における「商品等表示」についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 西村康夫、裁判官 森川さつき)は、


『2争点(2)(原告商品の商品形態の商品等表示性の有無)


 …省略…


(3)上記(2)アでみた原告商品の共通形態に商品等表示性を認めることができるかどうかについて検討する。

商品の形態は,一次的には商品の特性そのものであるが,二次的には商品の出所を表示する機能をも併有し得るというべきであり,商品の形態が他の同種商品と識別し得る独特の特徴を有するものである場合には,商品の出所表示機能を有し不正競争防止法2条1項1号所定の商品等表示に該当する場合がある。そして,商品等表示に該当する商品形態が長期間,継続的かつ独占的に使用されるか,又は,短期間であっても商品の形態について強力な宣伝広告等により大量に販売されるなどすることにより,商品等表示として周知性を獲得した場合には,当該商品形態は同号による保護を受けることができるが,他方,当該商品形態が他の同種商品と比べありふれたものである場合には,商品等表示として周知性を獲得することはできないものと解される。


 また,商品のデザインが変更され,変更後の商品が新商品として販売されているような場合であっても,旧商品と新商品との間において,独特の特徴を有する形態部分が共通しており,上記デザイン変更にもかかわらず,その識別力がデザイン変更前後を通じて維持されているような場合には,新旧商品において共通する上記特徴的部分が,新旧両商品に関する商品等表示として周知性を獲得することもあり得るものと解される。


イそこで,上記(2)アでみた共通形態が他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴を有するものであるかについてみると,原告は,原告商品はルーペであるところ,上記共通形態は,他の同種商品(ルーペ)と識別し得る独特の特徴であると主張し,他方,被告らは,原告商品は眼鏡(老眼鏡)であるところ,原告商品の上記形態は,通常の眼鏡と同様のありふれたものであると主張する。


 原告商品が,ルーペとして把握されるべきものであることは争点(1)に関する当裁判所の判断のとおりであるから,原告商品が眼鏡であることを前提とする被告らの主張をそのまま採用することはできない。


 しかし,前記(2)エのとおり,原告が原告商品の共通形態として主張するものが,市場において広く眼鏡タイプとされるルーペを含むものか,通常の眼鏡の形態のものに限定するものかは必ずしも明らかではないので,以下では,この2つの場合を分けて検討する。


 …省略…


(イ) このような原告商品の市場における取扱状況をみると,多数の商品を不特定多数のアクセス者に対して広告するウェブサイト広告においては,広く同種商品を紹介する目的で,老眼鏡と原告商品を同種商品として取り上げている例があり,小売店等においては,眼鏡と原告商品を別の売場で販売しているところもあるものの,近接した場所で販売している例も多い。


 需要者は,最終的に商品の機能を重視して購入するものであるから,老眼鏡とルーペの機能の相違に照らせば,上記のような市場の状況の下においても,最終的に老眼鏡とルーペを混同したまま購入するケースが必ずしも多いとは考えられない。


 しかし,老眼鏡とルーペはいずれも高齢者が近くの小さい文字等が見にくい場合に用いるという点では機能上の共通点があり,かつ,ウェブサイトの広告宣伝で同種商品として取り上げられ,また,小売店等においてもこれを近接した場所で販売している例が多いこと等に照らせば,需要者が,原告商品が独特の形態的特徴を有するか否かを判断するについて,市場において同種商品とされることがある老眼鏡の形態との比較をすることがあり得ることも否定できない。


 そして,原告が原告商品の共通形態であると主張する原告商品の上記?及び?の形態は,同種製品である老眼鏡の形態(乙24の16・18,25の1ないし3・5・9・11ないし14,26の1ないし5)と比較して,これらと識別し得る独特の特徴といえるものではないと解される。


 したがって,原告商品の形態が独特の特徴的形態と認識されるためには,市場において,それが老眼鏡と同種商品ではなく,異なる種類の商品であることが明確に区別して販売され,需要者においてもそのように認識されていることが必要であり,そうでなければ,原告商品の形態は老眼鏡と同種の商品として,格別の形態的特徴を有しないものとして認識されることにならざるを得ない。


 そこで検討するに,上記のような市場における原告商品の取扱い及び老眼鏡と原告商品との機能上の共通点に照らせば,原告商品が,需要者において老眼鏡と明確に区別され,独特の形態的特徴を有するものと認識されるまでには至ってはおらず,原告の主張する原告商品の共通形態に商品等表示性を認めることはできない。


(4)したがって,いずれにせよ,原告商品の共通形態が,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴に当たるものとはいうことができない。


3以上によれば,原告商品の共通形態に商品等表示性を認めることはできないから,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は理由がないことに帰着する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。