●平成23(ワ)7407 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件(2)

 本日も、『平成23(ワ)7407 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年1月31日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130206102735.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点1−3(先使用権の成否)以外についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康、裁判官網田圭亮)は、


『3争点2−1(不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性)について

 前記判断の基礎となる事実(第1の1(5))記載のとおり,被告P1は,原告らの取引先に書面を送付して,原告らによる本件口紅の販売等が被告P1の本件特許権を侵害する旨の事実を,それぞれ告げたものであり,被告atooは,これに沿う記事及び原告らと被告らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載したものである。


 しかし,前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するといえる。


 そして,上記書面の送付は被告P1の名によるもの,ウェブサイトへの掲載は被告atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,前記第1の1(3)のとおり,原告らは「ロレアル」のブランドの下に一体で事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,被告らが共同して,原告ら各々に対し行ったものと認めるのが相当である。


4争点2−2(不正競争防止法3条1項に基づく差止めの必要性)について

 被告らは,少なくとも平成23年5月31日に原告らとの間で合意書(甲36)を交わして以降,原告らの信用を毀損する行為を行っているわけではない(弁論の全趣旨)が,前記判断の基礎となる事実や証拠(甲2の1・2)に現れている従前の被告らの行為に照らせば,今後同様の信用毀損行為に及ぶおそれはなお否定できない。


 したがって,原告らの求める範囲において,被告らの信用毀損行為を差し止める旨命じる必要があるといえる。


5争点2−3(被告らの故意又は過失)について

 被告P1は,前記信用毀損行為に先立ち,特許庁に対し,本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するとの判定を得ており,前記1で論じたとおり,その判定に誤りはない。


 しかし,被告P1は,平成19年4月下旬には,蘇州シャ・シン社から,本件容器と同一の部位に同一形状の突状部を付けた容器図面を見せられ,当該突状部につき同社が日本で権利化している旨の説明を受けた上,同年6月にはそれが甲19考案に係る平成17年10月19日登録の実用新案権であることも知らされていた。そのため,被告P1は,平成19年3月1日出願に係る本件特許権について原告らが先使用権を有しており,本件口紅の販売等が本件特許権侵害とはならないことを十分に認識できたといえる。


 それにもかかわらず,被告P1及び同人が代表取締役を務める被告atooは,平成21年12月以降,前記信用毀損行為に及んだのであるから,これらは故意に基づくものというべきである。


7争点2−5(不正競争防止法14条に基づく信用回復措置の必要性)について


 原告らは,被告atooに対し,不正競争防止法14条に基づく信用回復措置として,被告atooのウェブサイトに謝罪文を掲載するよう求めている。


 しかし,被告atooが信用毀損行為に当たる掲載をしたのは自社ウェブサイトであり,マスメディアのウェブサイトなどのような多数のアクセス数を有するとは考えにくい。そのため,被告atooの行為により,損害賠償とあわせて謝罪文の掲載まで命じなければならないほどに,原告らの信用が害されたとは直ちに言い難い。また,そのようなアクセス数の観点からは,被告atooのウェブサイトに謝罪文を掲載することにつき,信用回復措置としての実効性も疑わしいといわざるを得ない。

 一方,原告らの信用は,原告らによる本件口紅の販売等につき,被告P1が本件特許権に基づく差止請求権等を有しないことを確認する旨の判決を得ることによって回復される部分が相当に大きいと考えられる。


 したがって,本件では,被告atooのウェブサイトに謝罪文掲載を命じる必要までは認められず,この点に関する原告らの請求は理由がない。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。