●平成24(行ケ)10191 審決取消請求事件 特許権「紫の可視光線と不

  本日は、『平成24(行ケ)10191 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「紫の可視光線と不可視光線近紫外線を透過する安全マスク」平成25年1月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130131102236.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、原告の主張についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『3原告の主張に対して

(1)本願発明について

 原告は,?本願発明におけるマスクは,1次側(外側)を紫が透かして見えるような紫透明のマスクとし,2次側(内側)を紫外線が消滅する構造とした,二重構造のマスクであり,また,?本願発明におけるマスクの1次側を紫が透かして見えるように透明にすれば,そこを透過した光線は,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線であり,その波長は400nm以下であるため,ウイルス等を殺菌する効果がある旨を主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,特許請求の範囲には,「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する」との構成は記載されているが,マスクの構造等を限定する記載はない。したがって,本願発明におけるマスクが,1次側(外側)を紫透明のマスクとし,2次側(内側)を紫外線が消滅する構造とした二重構造のマスクであることを前提とする原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,その主張自体失当である。


(2)引用発明の認定について

 原告は,引用発明におけるマスクは,微弱な紫外線しか透過しないため,内蔵した化学物質に化学反応を起こさせ,透過光の波長を400nm以下の360ないし370nmにしてウイルス等を殺菌すると主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,引用例には,化学反応によって,透過光の波長を変化させる旨の記載はなく,また,光触媒の反応によって光の波長が変化することを裏付ける証拠もない。原告の主張は失当である。(3)本願発明と引用発明の対比について原告は,本願発明と引用発明とは,?本願発明では,マスクの1次側を透過した紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の波長は400nm(数値は低いほどよい。)以下になるので,この透過光のみでウイルス等を殺菌し,「エコ」であるのに対し,引用発明では,化学物質による化学反応を誘発させることにより,透過光の波長を360ないし370nmにして,ウイルス等を殺菌するものである点,?本願発明では,有害な紫外線の波長が肌に届かないように,マスクの2次側で,1次側を透過した紫外線を消滅させる構造を採っているのに対し,引用発明では,そのような対策が採られていない点で相違すると主張する。


 しかし,原告の主張は,前記のとおり,特許請求の範囲の記載及び引用例の記載のいずれにも基づかない主張であって,主張自体失当である。


4結論

 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決にはこれを取り消すべき違法はない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。