●平成24(行ケ)10156審決取消請求事件商標権行政訴訟「壷プリン」

 本日は、『平成24(行ケ) 10156審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「壷プリン」平成24年11月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121204131613.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法3条1項3号および同条2項の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『2商標法3条1項3号該当性について(取消事由1)

上記認定した事実を基礎として,本件商標の商標法3条1項3号該当性の有無等について判断する。


(1)上記認定のとおり,「プリン」は,柔らかく,形状を維持できないことから,通常は,容器に入れられて販売されたり,提供されたりしている。「壷」とは,一般に,「口の狭まった陶器」や「口が細くつぼまり胴のまるくふくらんだ形の容器」を指すが,プリンの容器として,壷型の容器が用いられる例は少なくなく,壷型の容器に入れられたプリンは,本件商品以外にも,多くの店舗で販売されたり,提供されたりしている。そして,このような壷型の容器に入れられたプリンには,「壷(つぼ)プリン」又は「壷(つぼ)プリン」の語を含む名称で表示された例が少なくない。壷型以外の形状の容器に入れられたプリンも販売されており,そのような場合には,プリンが入れられている容器(「バケツ」型の容器や「缶」型の容器)の名称を付して,「バケツプリン」「缶プリン」等の表示がされた例がある。


 以上によると,需要者は「壷プリン」の表示から,当該商品が「壷型の容器に入れられたプリン」であると理解するものと認められる。そうすると,本願商標は,指定商品のうち「壷型の容器に入れられたプリン」に使用する場合には,商標法3条1項3号が規定する「その商品の形状(包装の形状を含む。)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当すると認められる。


(2)これに対し,原告は,?「壷プリン」の表示が使用されたプリンは,現在では他社からは販売されていなかったり,小規模の店舗で販売されたり,デザートとして提供されたりしているものであり,需要者は,他者の商品を知らないこと,?需要者が本願商標に接した場合に,「プリン自体の形状を示す」と認識したり,「壷で熟成して製造したことを示すもの」と認識したりする余地もあり,「壷型の容器に入れられたプリン」と一義的に認識するものではないなどと主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。


 まず,?他社における類似の表記例における期間の長短や規模の大小にかかわらず,「壷型の容器に入れられたプリン」を「壷(つぼ)プリン」と称する例が多数存在した事実は,需要者が本願商標のような「壷プリン」との表示に接した場合,「壷型の容器に入れられたプリン」であると容易に認識することにつながるものであるといえる。また,?プリンは柔らかく,形状が維持されないことを総合考慮すると,「壷プリン」の表記に接した需要者において,同表記が,「プリンそのものの形状を示すものである」と認識するとは到底考え難く,さらに,プリンは熟成されて製造される食品ではないことを考慮すると,「壷プリン」の表記に接した需要者において,同表記が,「壷で熟成して製造したことを示す」ものであると認識することも到底考え難い。したがって,需要者は,「壷プリン」の表記からは,「壷型の容器に入れられたプリン」であると認識するものと解される。


 以上によれば,本願商標は商標法3条1項3号に該当する。


3商標法3条2項該当性について(取消事由2)

(1)前記認定事実によれば,原告は,インターネットを利用した通信販売等により,全国的に本件商品の販売を行っており,また,本件商品は,テレビや雑誌等のメディアや,各種のウェブサイトでも取り上げられ,平成20年1月頃に本件商品の販売を開始して以降,売上高を伸ばし,平成23年には合計190万個以上を販売し,7億円以上の売上高を記録している。また,「Yahoo!」と「Google」の検索サイトにおいてキーワードを「壷プリン」としてインターネット検索をすると,いずれにおいても,上位の大多数が本件商品に関するサイトであり,本件商品は,多くの需要者に認識されている商品であるといえる。


 しかし,前記認定のとおり,原告は,本件商品の宣伝広告に当たっては,「魔法の壷プリン」又は「神戸魔法の壷プリン」の表示を使用してきたこと,テレビや雑誌等のメディア,各種ウェブサイトでも,本件商品は,ほとんどの場合,「魔法の壷プリン」「神戸魔法の壷プリン」「神戸フランツの壷プリン」「神戸フランツ魔法の壷プリン」「神戸フランツ神戸魔法の壷プリン」と表示されていることに照らすならば,「壷プリン」が使用されていると認めることはできない。


 ウェブサイト上には,消費者の書き込み等で,本件商品について単に「壷プリン」と記載されているものもないわけではない。しかし,その中には,「壷プリン」の記載の前後に,「魔法の壷プリン」「神戸魔法の壷プリン」との表示や,販売店である「神戸フランツ」の名称が併記されているものもある。(甲73)


 以上によれば,需要者は,「神戸フランツ」「魔法の壷プリン」「神戸魔法の壷プリン」との表示により,商品の出所が原告であることを認識していると認められ,「壷プリン」との標章のみによって,その出所が原告であると認識していると認めることはできない。したがって,「壷プリン」のみにより,その出所が原告であることを認識できる状況に至ったと解することはできない。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。