●平成23(行ケ)10371 審決取消請求事件 特許権「護岸の連続構築方

 本日は、『平成23(行ケ)10371 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「護岸の連続構築方法および河川の拡幅工法」平成24年7月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120813161602.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本件発明の容易想到性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人、裁判官 齋藤巌)は、


『3 本件発明の容易想到性について

(1) 前記2のとおり,引用発明には,既存の護岸の背面(外側)又は内側に鋼管矢板壁を構築することが記載されているものの,既設の護岸そのものに鋼管矢板壁を構築することは記載されていないから,既設の護岸は単なる除去の対象でしかなく,それを有効活用する着眼は,存在しない。


 また,周知例1ないし6,甲14及び甲15等は,いずれも,既設護岸を維持するものであり,鋼管杭列からなる連続壁の構築を,除去することを前提としたコンクリート護岸を有効活用して行うという着眼は,いずれにも記載されておらず,その示唆も存在しない。


 これに対し,前記1のとおり,本件発明は,鋼管杭列及び連続壁の構築を,除去することを前提としたコンクリート護岸を対象に行うものであり,従来,単なる除去の対象でしかなかったコンクリート護岸を有効活用する点に着眼の目新しさが認められる。


(2) 以上のとおり,引用例,周知例1ないし6及び本訴において提出された証拠のいずれにも,除去することを前提としたコンクリート護岸を有効活用するという本件発明の着眼が記載されておらず,又は示唆されてもいない。そして,本件発明の上記着眼が新規であることに照らすと,引用発明に周知例1ないし6又は甲14及び甲15に記載された個別的かつ断片的な技術を組み合わせる動機がそもそも存在しない。また,これらを組み合わせても,本件審決が相違点として認定した鋼管杭列の構築手段,すなわち,「切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し,この鋼管杭列から反力を得ながら,上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入」という構成には至らない。


 よって,引用例に基づいて相違点に係る本件発明の構成が容易に想到できたものということはできない。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。