●平成23(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権「排気熱交換器」

  本日は、『平成23(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「排気熱交換器」平成24年7月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120810164639.pdf)について取り上げます。


 本件は、審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、前判決の拘束力についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人、裁判官 齋藤巌)は、


『 (2) 前判決の拘束力

特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理,審決をするが,審決取消訴訟行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理,審決には,同法33条1項の規定により,取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。


 したがって,再度の審判手続において,審判官は,当事者が取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返しあるいはその主張を裏付けるための新たな立証を許すべきではなく,取消判決の拘束力に従ってした審決は,その限りにおいて適法であり,再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることはできない(最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁)。



イ これを本件についてみると,前判決は,前審決が認定した引用例1に記載された発明(本件審決が認定した引用発明と同じものである。)を前提として,前審決が認定した相違点5(本件審決が認定した相違点5と同じものである。)に係る本件発明1の構成のうち,?切り起こし部の排気流れ方向での長さLが,fh<7,fp≦5のとき,0.5<L≦7(単位:?),fh<7,5<fpのとき,0.5<L≦1(単位:?),7≦fh,fp≦5のとき,0.5<L≦4.5(単位:?),又は,7≦fh,5<fpのとき,0.5<L≦1.5(単位:?)とする構成についても,?X=de×L0.14/fh0.18としたときに,相当円直径de及び切り起こし部の排気流れ方向での長さLが,粒子状物質がインナーフィンに堆積することを抑制するために,1.1≦X≦4.3を満足する大きさになるという構成についても,引用発明との間に相違はないと判断して,引用発明に基づいて容易に発明することはできないとした前審決を取り消したものであるから,少なくとも,引用発明の認定及び相違点5に係る判断について,再度の審決に対する拘束力が生ずるものというべきである。


 また,前判決は,引用発明から算出した関数Xは,本件発明2のXの数値範囲(1.2≦X≦3.9)及び本件発明3のXの数値範囲(1.3≦X≦3.5)についても充足することを示した上で,本件発明2及び3についても,これを容易に発明することができないとした前審決を取り消したものであるから,前判決は,本件審決が認定した相違点6に係る本件発明2の構成についても,相違点7に係る本件発明3の構成についても,本件発明1と同様に,引用発明との間に相違はないと判断したものということができる。したがって,前判決のこれらの判断についても再度の審決に対する拘束力が生ずるものというべきである。


 以上によれば,本件審決による引用発明の認定並びに相違点5ないし7に係る判断は,いずれも前判決の拘束力に従ってしたものであり,本件審決は,その限りにおいて適法であり,本件訴訟においてこれを違法とすることはできない。


ウ 原告の主張について

 原告は,前訴においては,Xの式に関して十分な審理がされていないから,本件訴訟における原告の主張は,前判決の拘束力により妨げられるものではないなどと主張する。


 しかし,前記2(1)イのとおり,前判決は,X=de×L0.14/fh0.18としたときに,相当円直径de及び切り起こし部の排気流れ方向での長さLが,粒子状物質がインナーフィンに堆積することを抑制するために,1.3≦X≦3.5(本件発明1),1.2≦X≦3.9(本件発明2)又は1.3≦X≦3.5(本件発明3)を満足する大きさになるという構成は,引用発明との間に相違はないとの判断を示した上で,結論として,本件発明は引用発明に引用例2ないし5に記載された事項を適用しても当業者が容易に発明することができたということはできないとした前審決を取り消しているのであって,この前判決の判断に拘束力が生ずることは明らかであり,原告の上記主張は失当である。』

 と判示されました。


 なお、本件中で引用している最高裁判決は、●『昭和63(行ツ)10 審決取消 特許権 行政訴訟「高速旋回式バレル研磨法事件」平成4年04月28日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121142852599.pdf)です。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。