●平成23(ワ)35541 許諾料返還請求事件 著作権 民事訴訟

  本日は、『平成23(ワ)35541 許諾料返還請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年7月19日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120725110600.pdf)について取り上げます。


 本件は、著作権に基づく許諾料返還請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、争点(被告が,原告に対し,原告による漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権の侵害に基づく損害賠償請求権を有するか否か)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『1争点につき検討する。

(1)被告は,原告が,本件パチンコ遊技機を製造販売することにより,本件漫画に関する被告の独占的商品化権若しくは独占的に商品化して得られる利益を侵害した旨主張する。かかる主張は,上記権利ないし利益の内容を含めて,その趣旨が判然としないが,これをもって,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が,本件小説の二次的著作物である本件漫画の著作権,特に複製権・翻案権を侵害しているという趣旨であると善解することができるとしても,被告は,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が本件漫画に依拠したものであることについて何ら具体的な主張立証をしないばかりか,本件漫画の表現と上記表示における表現とが完全に違っていることを自認しているから,本件パチンコ遊技機を製造販売することが本件漫画の複製権・翻案権を侵害するとは認められない。


(2)また,被告は,本件漫画に登場する「桃太郎侍」などのいわゆるキャラクターが著作物であるかのような主張もするが,本件漫画を離れ,キャラクター自体を著作物と認めることはできないというべきであるから(最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照),被告の上記主張は失当というほかない。


(3)その他,本件全証拠によっても原告の被告に対する不法行為の成立を認めることはできない。


2以上のとおり,被告が主張する自働債権の発生を認めることができないから,被告の相殺の抗弁は理由がない。


3よって,原告の請求は全て理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 なお、本件中で引用されている最高裁事件は、●『平成4(オ)1443 著作権侵害差止等 著作権 民事訴訟「ポパイ著作権事件」平成9年07月17日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122323439805.pdf)です。