●平成23(ネ)10085 意匠権侵害差止等請求控訴事件「目違い修正用治

 本日は、『平成23(ネ)10085 意匠権侵害差止等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟「目違い修正用治具平成24年6月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120703120615.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止等請求控訴事件で、その控訴が棄却された事案です。


 本件では、当審における当事者の追加的主張についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 池下朗、裁判官 武宮英子)は、


『2 当審における当事者の追加的主張について

(1) 原告は,需要者の注意を惹きやすい部分は,?基本的構成態様のうち,底面部材と垂直部材とからなる取付基部,底面部材の上面に配置され両側に伸びる水平基部,水平基部の両端部近傍に設けられた調整用ボルトを有する点,?具体的構成態様のうち,取付基部がコの字状を呈する点であるのに対して,把持部材の形状,補強板の有無及び形状は,需要者の注意を惹きやすい部分とはいえない旨主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。

 原判決22頁26行目ないし24頁15行目記載のとおり,底面部材と垂直部材と上部部材とからなる取付基部,底面部材の前面に配置され両側に伸びる水平基部,水平基部の両端部近傍に設けられた調整用ボルトを有し,取付基部がコの字状を呈する目違い修正用治具の意匠は,本件登録意匠の登録出願前に公知であったことが認められる。


 また,原判決22頁1ないし25行目記載のとおり,目違い修正用治具は,建設現場や造船所等で使用され,需要者は,そのような場所で作業を行う業者であり,目違い修正用治具の使用方法及び需要者層からすれば,目違い修正用治具は,その実用的な観点から,使用時における取り扱いやすさ(持ちやすさ,目違い修正の対象となる突合部への目違い修正用治具の開口部の設定のしやすさ,調整用ボルトの締めやすさなど),耐久性に着目して選択されると考えられるから,目違い修正用治具の把持部材の形状,開口部を有する取付基部の形状,調整用ボルトの形状,補強板の形状(補強板の有無を含む。)における特徴は,需要者の注意を惹きやすい部分であると認められる。


 以上の事情によれば,目違い修正用治具では,上記?,?の点が需要者の注意を惹きやすい部分であり,把持部材の形状,補強板の有無及び形状は,需要者の注意を惹きやすい部分ではないとする原告の主張は,採用の限りでない。


 この点,原告は,把持部材は,目違い修正用治具を安全に持ち運びできるように取り付けられているものにすぎず,需要者がその形状に関心を払うとはいえない,補強板は,目違い修正用治具の耐久性を高める観点から取り付けられるのであり,目違い修正用治具としての機能を実現するための手段にすぎないから,その有無,形状が需要者の注意を惹くとはいえない旨主張する。しかし,原告の主張は採用できない。上記認定のとおり,目違い修正用治具の需要者は,持ち運びの容易性,安全性や耐久性等を考慮して,製品を選択するものと考えられ,そのような機能性に関連する形状等も美感を判断する要素であると解されるから,目違い修正用治具の把持部材の形状,補強板の有無,形状も,需要者の注意を惹きやすい部分というべきである。


(2) 原告は,上記(1) の?,?が需要者の注意を惹きやすい部分であることを前提として,被告意匠と本件登録意匠が需要者に与える印象は同一である,取付基部の形状,調整用ボルトの形状の差異は,設計上のわずかな差であり,需要者に与える印象が大きく異なるとはいえない旨主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。上記(1) 認定のとおり,上記(1) の?,?は需要者の注意を惹きやすい部分とはいえないから,原告の主張は前提を欠く。また,被告意匠と本件登録意匠における取付基部の形状,調整用ボルトの形状は,原判決25頁14ないし22行目(?),26頁5ないし13行目(?)記載のとおりであり,その形状の差異は,需要者に異なる美感を与えるというべきであって,設計上のわずかな差であるとは評価できない。


3 小括

 以上のとおり,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がなく,原判決の判断は正当である。原告は,他にも縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。』

 と判示されました。