●平成23(ワ)37057 発信者情報開示請求事件 商標権 民事訴訟

 本日は、『平成23(ワ)37057 発信者情報開示請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年6月28日 東京地方裁判所 』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120704165906.pdf)について取り上げます。


 本件は,原告が,被告のレンタルサーバに記録されたウェブページによって権利を侵害されたと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告のレンタルサーバに上記ウェブページの情報を記録した者について,被告が保有する発信者情報の開示を求めた事案で、その請求が認容された事案です。


 本件では、不競法2条1項1号についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 小川卓逸)は、


『1本件ウェブサイトによって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか否かについて


⑴前記前提となる事実に,証拠(甲8,9の1,2,10ないし16)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。


ア原告は,昭和23年2月に創業した株式会社であって,オフィス家具,オフィスインテリア用品の製造販売,文具,事務用品,OA,PC関連商品,事務機器の製造販売等を事業内容にしている。


イ原告は,創業当時から原告商品等表示を使用し,昭和39年12月からは原告商品等表示を付した商品カタログを発行してきた。原告の商品や役務は,一般紙,経済紙,地方紙,雑誌,テレビ,ラジオ等の媒体を通じて紹介されることがあるが,平成22年5月21日から平成23年5月20日までを例にとって,この間に紹介された媒体を集計してこれを広告費に換算すると,16億8333万円余りに及ぶ。


ウ社団法人全日本文具協会が平成6年に発行した「日本国における文具有名商標集1994」は,日本における文具関係の有名商標を外国にアピールするとともに,周知商標の立証の一助にする目的で発行されたものであるが,この中に原告の商標として原告商品等表示が掲載されている。また,社団法人国際工業所有権保護協会日本部会(AIPPIJAPAN)が発行する「日本有名商標集」は,特許庁の商標法4条1項10号,11号,15号又は19号の審査において,「需要者の間に広く認識されている商標」に関する審査を円滑かつ統一的に行うために利用する資料の一つであるが,その平成10年版及び平成16年版には,いずれも原告の商標として原告商品等表示が掲載されている。


(2)上記(1)の認定事実によれば,平成23年8月までには,原告商品等表示は原告の営業を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められる。


(3)本件各標章の要部は,「PLUS」あるいは「Plus」の部分であって,本件各標章は周知の原告商品等表示に類似するから(このことは,被告も認めるところである。),本件ウェブページ上でその営業を表示するものとして本件各標章を使用する行為は,不競法2条1項1号に該当し,原告の営業と混同を生じさせるものということができる。そして,本件において,特段の事情があることは窺えないから,本件ウェブページ上で本件各標章を使用する行為によって原告の営業上の利益が侵害されたものと認められる。


(4)被告のレンタルサーバは,インターネット上で不特定の者に対する送信をするのであるから,本件ウェブページに掲載された情報の流通によって原告の権利が侵害されたことは明らかである。


2上記1に判示したところによれば,原告が損害賠償請求権を行使するためには,被告のレンタルサーバに本件ウェブページの情報を記録した者の発信者情報が必要であるから,原告にはその開示を受けるべき正当な理由があると認められる。


第4結論

 よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。