●平成24(ネ)10011 損害賠償請求控訴事件 特許権「開蓋防止機能付

 本日も、『平成24(ネ)10011 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟「開蓋防止機能付き密閉容器」平成24年6月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120702153512.pdf)について取り上げます。


 本件では、意匠の類否についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、裁判官 古谷健二郎)は、


『(3)意匠の類否について


ア控訴人は,本件意匠の要部を認定する際に,その出願前における密閉容器の外形は円形であることが常識的であったことからして,これと機能の異なる密閉機能を有しない公知意匠を本件意匠と対比すべきではないのに,そのような対比をして,本件意匠の要部は,外部形状ではなく,摘み部分であると認定した原判決には誤りがある旨主張する。

 しかしながら,本件意匠の出願前における密閉容器の外形は円形であることが常識的であったという事実を認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙ロ2)によれば,本件意匠の出願(平成7年1月20日)から6年以上前の昭和63年10月19日に出願された考案に係る公開実用新案公報には,外部輪郭が全般的に略正方形であって,角に相当する部分が弧状をなしている気密性を有する包装用容器の図面が記載されていることが認められるのであり,控訴人の上記主張は,その前提を欠く。


イ控訴人は,本件意匠に係る包装用容器は開蓋防止機能を有するのに対し,公知意匠に係る包装用容器はそのような機能を有しないことから,本件意匠には公知意匠にはない創作性が認められるのであり,そのような公知意匠の存在をもって本件意匠がありふれた態様であったとはいえないと主張する。


 しかしながら,仮に開蓋防止機能を有するが故に創作性が認められるとすれば,それは,開蓋防止機能に関連する部分の意匠について認められるのであって,そのような機能と関連しない形状についてまで創作性が認められる根拠にはならないと解されるところ,控訴人が本件意匠の要部と主張する「外部輪郭は,全般的に略正方形の形をしながら,各辺に相当する部分については膨らみを帯びた弧状(大きな円の円弧に近い曲線)を成しており,かつ,略正方形の角に相当する部分は,各辺に相当する部分よりも曲率の大きな弧状(小さい円の円弧に近い曲線)を成している。このため,本件意匠は,全体として膨らみを帯びることとなる。」という形状は,原判決が57頁10行目以下の「(2)公知意匠」で判示するとおり,開蓋防止機能の有無にかかわらず,包装用容器の意匠としてありふれたものと認められるから,そのような外部形状は本件意匠の要部には当たらないとした原判決の判断に誤りはない。


ウ控訴人は,公知意匠の要部は模様等であるとした上で,これを本件意匠と対比し,本件意匠は無模様であることから,その形状,特に上部の外部輪郭が要部に当たる旨主張する。


 しかしながら,公知意匠を参酌することによって本件意匠の要部から除外したのは,公知意匠におけるありふれた形状であり,控訴人の上記主張は採用することができない。


エ控訴人は,需要者である一般消費者は,容器の側面を重視しないから,側面の摘みを本件意匠の要部と認定した原判決は誤りである旨主張する。


 しかしながら,原判決が58頁22行目から59頁22行目にかけて判示するとおり,開蓋防止機能のある包装用容器について,一般消費者は,未開封であること(食品の安全性)の確認等の観点から,摘み部分の形状に着目するものと認められるのであって,摘み部分が本件意匠の要部であるとした原判決の認定に誤りはない。


第5結論

 よって,被告製品は本件発明の技術的範囲に属するものではなく,本件意匠と類似するものでもないから,本訴請求を棄却した原判決は相当であるので,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。