●平成24(行ケ)10084 審決取消請求事件「多糖類由来化合物の生成方

 本日は、『平成24(行ケ)10084 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「多糖類由来化合物の生成方法並びに生成装置」平成24年6月14日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120618110249.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、特許法121条2項の「責めに帰することができない理由」についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳、裁判官 武宮英子)は、


『当裁判所は,原告主張の取消事由は理由がなく,審決に取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は以下のとおりである。


特許法121条2項は,「拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは・・・その理由がなくなった日から14日・・・以内でその期間の経過後6月以内にその請求をすることができる。」と規定しており,「責めに帰することができない理由」とは,天災地変のような客観的な理由に基づいて手続をすることができないことのほか,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由をいうものと解される。


 原告は,平成23年4月28日に拒絶査定の謄本の送達を受け,本件審判の請求を同年7月29日にしたことが認められる(当事者間に争いがない。)が,以下のとおり,この点について,原告の「責めに帰することができない理由」によるものとは認められない。すなわち,


(1)原告は,「拒絶査定の謄本は,平成23年4月28日に原告の代理人に送達されたが,原告が査定の謄本を受け取ったのは同月29日であり,原告は,錯誤により,同年7月29日までに不服審判を請求すべきものと考え,同日より1日早く不服審判を請求しようとしたが,電子申請ソフトのバグ修正に手間取り,同年7月29日零時2分57秒の請求となった。」旨主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。原告の上記主張に係る事情は,結局,原告の注意が不足したため,錯誤に陥り,手違いが発生したというものであるから,原告の「責めに帰することができない理由」とはいえない。


(2)原告は,「平成23年東北地方太平洋沖地震により二次的被害を受け,特別措置法3条3項に基づく審判請求期間の延長を受けられるはずであり,平成23年9月7日に住所変更,同年11月4日に上申書を提出し,同年12月7日に請求項に対する納付金を納入しているから,審判請求期間の延長の申し出に関する手続は補正されているから,特許法121条2項の適用が認められるべきある。」旨主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。原告は,地震による二次的被害として,上記第3の1(3)のような事情を主張するが,原告の主張を最大限考慮しても,それらの諸事情と,本件審判の請求が1日遅れたこととの間に因果関係は認められず,原告の「責めに帰することができない理由」により審判請求期間内に請求をすることができなかったとはいえない。


(3)原告は,「原告には,東北地方太平洋沖地震に起因して,拒絶査定に対する不服審判請求の対応以外にも,生活環境に負荷がかかっていた」旨の諸事情を縷々主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。原告の主張する諸事情と,本件審判の請求が1日遅れたこととの間に因果関係は認められず,原告の「責めに帰することができない理由」により審判請求期間内に請求をすることができなかったとはいえない。


(4)以上のとおり,本件審判の請求について,特許法121条2項の適用は認められない。


 また,原告は,本件審判の請求について,同法4条,5条により期間が延長されるべき場合である旨も主張するが,本件の拒絶査定について,同法4条に基づく同法121条1項の期間の延長はなされておらず,延長しなかったことを違法と判断すべき事情も認められない。さらに,同法5条による期間延長は,指定期間の延長に関するものであるから,法定期間である審判請求期間の延長には適用する余地がない。』

と判示されました。