●平成22(ワ)26341 特許権侵害差止等請求事件「油性液状クレンジン

 本日も、『平成22(ワ)26341 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「油性液状クレンジング用組成物」平成24年5月23日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120614140049.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点(1)ウ(侵害論の補足主張・作用効果不奏功の抗弁等)における被告の主張を時期に後れてなされた防御方法の提出に当たると判断した点も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 森川さつき、裁判官 菊池絵理)は、


『(3) 争点(1)ウ(侵害論の補足主張・作用効果不奏功の抗弁等)


ア 被告は,平成23年12月14日付け被告準備書面(6)の1頁冒頭ないし7頁18行目,40頁15行目ないし60頁7行目において,本件発明1の作用効果(「透明性」)に関し主張を補足した上で,被告各製品が本件発明1の技術的範囲に属しないことに関し,新たな主張を追加し,その補強として,乙22ないし24及び37ないし51号証(枝番を含む。)の提出の申し出をした。なお,被告の上記主張のうち,上記準備書面1頁冒頭ないし7頁18行目に係る主張は,損害論に関する原告の主張に対する反論として記載されているものであるが,その内容にかんがみ,上記のとおり,本件発明1の作用効果(透明性)に関し,主張を補足し,技術的範囲の属否に関し新規主張をするものであると認められる。


 これに対し,原告は,上記主張及び書証の提出申し出は,時機に後れた攻撃防御方法に当たる(民訴法157条1項)と主張し,却下の申立てをした。


イ そこで検討すると,本件訴訟に至る経緯及び本件訴訟経過は以下のとおりである。

(ア) 原告は,前記前提事実(4)のとおり,本件訴訟提起に先立ち,平成22年4月13日付けで被告製品1が本件発明1及び3の技術的範囲に属する旨を記載した書面を送付し,被告は,これに対し,被告製品1は透明性を有しないから本件発明1の技術的範囲に属しない旨を回答した(甲12,14)。


(イ) 原告は,上記回答を踏まえ,本訴における訴状において,被告各製品が本件発明1の作用効果(透明性)を有し,本件各発明の技術的範囲に属する旨を主張した。これに対し被告は,平成22年9月8日付け答弁書において,本件発明1の作用効果としての「透明性」を限定解釈した上で,被告各製品が本件発明1の技術的範囲に属しない旨の主張をし,その後,同年12月17日付け被告準備書面(2)で,原告の反論に再反論する形式で,上記主張を補充した。


(ウ) 裁判所は,平成23年5月31日の第5回弁論準備手続期日において,原告及び被告から,本件の侵害論に関する主張立証は終了した旨を聴取した上で,侵害論に関する審理を終結し,本件に関する裁判所の見解を示して和解を勧告するとともに,損害論に関する審理に入った(第5回弁論準備手続調書,当裁判所に顕著な事実)。


(エ) 被告の上記準備書面(6)の提出並びに乙22ないし24及び37ないし51号証の提出の申し出は,裁判所が,被告に対し,被告各製品の利益率に関する具体的主張を行うよう指示したことを受け,提出されたものである。


ウ 以上の経緯にかんがみ検討すると,被告は,本件訴訟提起前から,本件発明1の作用効果(透明性)の限定解釈に基づき,被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属しない旨を主張していたものであり,上記時点において,上記主張について既に検討を行っていたものということができる。加えて,本件訴訟において,上記主張に係る点は,訴状段階から争点とされていたものであるということができるから,被告は,侵害論に関する審理を終結した平成23年5月31日までに,侵害論に関する前記補足主張をし,前記書証を提出することが可能であったというべきである。それにもかかわらず,被告は,裁判所が侵害論の審理を終結し,裁判所の見解を示して和解の勧告を行った後であり,かつ,損害論の審理中であった平成23年12月14日の段階に至って上記補足主張及びその裏付けとなるべき書証の提出申し出をしたものであるから,これは,重大な過失により時機に後れてなされた防御方法の提出に当たるというべきである。また,これにより本件訴訟の完結を遅延させることになることも明らかである。


エ したがって,民訴法157条1項に基づき,被告の上記主張並びに乙22ないし24及び37ないし51号証の提出申し出は,いずれも却下する。


(4) 小括

 したがって,被告各製品は本件発明1の技術的範囲に属する。』

 と判示されました。