●平成21(ワ)17937 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟

 本日は、『平成21(ワ)17937 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「ディジタル有効データの伝送方法」平成24年5月31日東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120613102810.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点1(被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 小川卓逸、裁判官 山門優)は,


『1争点1(被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか)について

 本件では,被告方法が本件発明の構成要件AないしD,F,Hを充足することについては当事者間に争いがない。そして,原告は,被告が被告方法においてTrFO接続又はTFO接続を実施しており,被告方法が構成要件E及びGも充足し,被告方法が本件発明の技術的範囲に属すると主張する。

 そこで,被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか否かを判断するため,以下では,被告が被告方法においてTrFO接続又はTFO接続を実施しているかについて検討する。


(1)3GPP規格とTrFO接続及びTFO接続の関係について

 被告が3GPP規格に準拠した被告方法を実施していることは,当事者間に争いがない。


 この点,3GPP規格には,TrFO接続及びTFO接続の実施方法について,詳細な規定が定められている(甲7,8,13,37,45,57,58)。


 しかしながら,3GPP規格に定められたTrFO接続やTFO接続の実施方法についての規定が,同規格に準拠する場合に必ず実施しなければならない性質のものであることを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告が3GPP規格に準拠した被告方法を実施しているとしても,そのことから直ちに被告が被告方法においてTrFO接続やTFO接続を実施していることが認められるわけではない。


 なお,証拠(甲49,50,53の1・2,乙128)によれば,原告が主張するように,ARIBやTTCの標準規格や仕様書の中に,3GPP規格のTrFO接続やTFO接続の実施方法についての規定を採用しているものがあることが認められるが,これらの規定がARIBやTTCの会員が必ず従わなければならない性質のものであることを認めるに足りる証拠はない。したがって,上記の標準規格や仕様書が存在することも,被告が被告方法においてTrFO接続やTFO接続を実施していることの裏付けにはならない。


・・・省略・・・


エこのように,被告と他の通信会社との間の相互接続の条件について検討しても,被告機器と他の通信会社の携帯端末との間で行われる通信において,TFO接続やTrFO接続が実施されていると認めることはできない。


(3)よって,被告と他の通信会社による本件特許権の共同直接侵害も成立しないというべきである。


3まとめ

 以上のとおり,被告方法が本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできず,被告方法の使用に用いられる被告機器の輸入,販売及び販売の申出が本件特許権の間接侵害(特許法101条4号)を構成することもない(争点2)から,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないこととなる。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。