●平成22(ワ)805 意匠権侵害差止等請求事件「タイルカーペット

 本日は、『平成22(ワ)805 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「タイルカーペット」平成24年3月15日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120425172238.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、意匠の類非の判断が参考になるかと思います・


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 西田昌吾)は、


『ウ 要部

 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。


 したがって,その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。


 以下,このような観点から,本件意匠の要部について検討する。

(ア) タイルカーペットの性質,用途,使用態様等


 …省略…


(イ) 公知意匠


 …省略…


(ウ) 要部


 …省略…


 これらのことからすれば,本件意匠において,需要者の注意を惹き付ける要部は,タイルカーペットの表面全体に,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が緩やかに蛇行し,略小波状模様をなしている点であると認められる。


 そして,本件意匠の要部に係る上記認定は,本件意匠登録に係る審査手続の過程における原告の主張(乙4,乙7の1)と矛盾するとは認められない。

(3) 被告意匠の構成


 …省略…


(ウ) 類否判断

 以上のとおり,被告意匠と本件意匠は,タイルカーペットの表面全体に,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしているという,本件意匠の要部において共通する。


 そして,前記(イ)で述べたとおり,「密な状態」の程度に係る差異や,短い縦線の形態に係る差異は,タイルカーペットの現実の使用場面において,美感に差異を生じさせるものではなく,結局,需要者が両意匠の差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものではないといえる。


 したがって,本件意匠と被告意匠は,全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を共通にしているということができ,類似するといえる。』

 と判示されました。