●平成22(ワ)805 意匠権侵害差止等請求事件「タイルカーペット

 本日も、『平成22(ワ)805 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「タイルカーペット」平成24年3月15日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120425172238.pdf)について取り上げます。


 本件では、意匠法3条2項の容易創作性についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 西田昌吾)は、


『5 争点2−4(本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠か)について


(5) 容易創作性

ア 意匠法3条2項について

 意匠法3条2項は,物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内(又は外国)において広く知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準として,それから当業者が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり,そのモチーフを基準として,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものである最高裁昭和49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁,最高裁昭和50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参照)。


イ 本件意匠についての検討

 被告は,乙86意匠の縦条模様における,短い線分が断続的に密集した箇所を,乙85意匠又は乙3意匠に表された蛇行線に適用すれば,本件意匠に極めて近似した意匠が形成されると主張する。しかしながら,被告の主張は,前記4(6)のとおり本件意匠とは多くの差異点を有する乙86意匠において,その一部分に過ぎない「短い線分が断続的に密集した箇所」のみを取り上げて,他の意匠への適用を主張するものであるが,モチーフの特定として十分とはいえず(被告の主張は,「断続した線分の連続により線模様を描く」という技法を取り上げて,他の意匠への適用を主張しているに等しい。),これを基準として意匠の創作容易性を検討することは困難というべきである。


 また,上記「短い線分が断続的に密集した箇所」を基準となるモチーフとして検討しても,本件意匠の蛇行線(略小波状模様)は,乙85意匠(波長の大きな略波模様),乙3意匠(フリーハンドで描かれた線様),被告の指摘する他の公知意匠(乙10ないし乙27)の各蛇行線のいずれとも異なるものであって,具体的な蛇行線の描き方については,当業者において創意工夫を要するものというべきである。


 したがって,本件意匠は,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができた意匠であるとは認められない。


(6) まとめ

 以上のとおりであるから,本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。