●平成23(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「医薬」

 本日は、『平成23(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「医薬」平成24年4月11日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120417163057.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の無効審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、まず、取消事由1(引用例3に基づく本件発明1等の新規性に係る判断の誤り)についての判断が参考になると思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 井上泰人、裁判官 荒井章光)は、


『2 取消事由1(引用例3に基づく本件発明1等の新規性に係る判断の誤り)について

 以上を踏まえて,本件発明1等の新規性についてみていくこととする。

(1) 引用例3の図3に記載の発明の構成について

特許法は,発明の公開を代償として独占権を付与するものであるから,ある発明が特許出願又は優先権主張日前に頒布された刊行物に記載されているか,当時の技術常識を参酌することにより刊行物に記載されているに等しいといえる場合には,その発明については特許を受けることができない特許法29条1項3号)。


 ・・・省略・・・


(2) 引用例3の図3に記載の発明及び本件各発明の作用効果について


 ・・・省略・・・


(3) 本件発明1等の新規性について

 以上のとおり,引用例3の図3には,「ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容し得る塩と,アカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれるα−グルコシダーゼ阻害剤とを組み合わせてなる糖尿病又は糖尿病性合併症の予防・治療薬」という構成の発明が記載されているものと認められ,当業者は,本件優先権主張日当時の技術常識に基づき,当該発明について,両者の薬剤の併用投与によるいわゆる相加的効果を有するものと認識する結果,ピオグリタゾン等の単独投与に比べて血糖低下作用が増強され,あるいは少量を使用することを特徴とするものであることも,当然に認識したものと認められるほか,下痢を含む消化器症状という副作用の軽減という作用効果を有することも認識できたものと認められる。


 したがって,引用例3の図3には,本件発明1等の構成がいずれも記載されており,本件優先権主張日当時の技術常識を参酌すると,その作用効果又は作用効果に関わる構成もいずれも記載されているに等しいというべきであって,これらの発明は,いずれも特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明(特許法29条1項3号)であるというほかない。


 よって,本件審決は,引用例3の図3に記載の発明についての認定を誤り,ひいては本件発明1等に関する特許法29条1項3号の適用を誤るものであって,取消事由2(引用例4に基づく本件発明1等の新規性に係る判断の誤り)について判断するまでもなく,取消しを免れない。』

 と判示されました。