●平成23(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成23(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「病原性プリオン蛋白質の検出方法」平成24年3月28日 知的財産高等裁判所(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120330154531.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件せ、その請求が棄却された事案です。


 本件では、改正前特許法30条についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 井上泰人、裁判官 荒井章光)は、


『ア改正前特許法30条の解釈について

(ア) 改正前特許法30条は,「特許を受ける権利を有する者が試験を行い,刊行物に発表し,又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより,第29条第1項各号の1に該当するに至つた発明について,その該当するに至つた日から6月以内にその者が特許出願をしたときは,その発明は,同項各号の1に該当するに至らなかつたものとみなす。」と規定されていたところ,平成11年特許法改正により,「特許を受ける権利を有する者が試験を行い,刊行物に発表し,電気通信回線を通じて発表し,又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより,第29条第1項各号の1に該当するに至つた発明は,その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については,同条第1項各号の1に該当するに至らなかつたものとみなす。」と改正されたものである。


(イ) 平成11年特許法改正による改正前特許法30条の改正は,新規性喪失の例外適用の拡大を目的とするものであり,改正前においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,特許出願に係る発明と発表等がされた発明とが同一である場合に限られていたが,当該要件を見直し,これを同一のみならず,自己の発表等を行った発明から出願の発明が容易に発明をすることができた場合(両者に相違点が存在する場合)まで適用可能とし,当該発明の新規性又は進歩性の判断において,発表等の行為を考慮しないこととする趣旨の改正であるとされる(甲11,乙2)。


 このように,改正前特許法30条においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,進歩性の判断の場合を含まず,新規性の判断の場合のみであると定められており,特許庁における運用についても,同様であったことについては,原告も争うものではない。平成11年特許法改正は,上記解釈及び運用を前提として,例外が適用される範囲を進歩性判断の場合にまで拡大したものである。


(ウ)平成11年5月14日法律第41号附則2条は,平成11年特許法改正に伴う経過措置を定めるところ,同条1項は「この法律の施行の際現に特許庁に係属している特許出願に係る発明の新規性の要件については,その特許出願について査定又は審決が確定するまでは,なお従前の例による。」と定めている。これは,新規性喪失の例外の適用が拡大されると,第三者に対して不利益変更となり得るものであることから,新規性の要件について経過措置を設けたものと解される。特許庁における取扱いも,上記経過措置に従い,平成11年12月31日以前の特許出願については,「公開した発明が特許出願に係る発明であること」を要求しているものである(乙3)。


イ改正前特許法30条適用の適否

 原告は,平成11年特許法改正により,進歩性判断の場合にまで例外規定が拡大された趣旨をふまえ,改正前特許法30条の適用においても同様に解し,本件出願にもその趣旨を拡大して同条が適用されるべきであって,引用例1を引用例として用いることはできないと主張する。


 しかしながら,前記アの改正前特許法30条の解釈によれば,同条を原告主張のように拡大して適用することができないことは明らかである。原告の主張は採用できない。

ウ小括

 以上からすると,本件出願に関し,引用例1を引用例として用いた本件審決の判断に誤りはない。』


 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。