●平成23(ネ)10035 実用新案権侵害差止等請求控訴事件「靴載置用棚

 本日は、『平成23(ネ)10035 実用新案権侵害差止等請求控訴事件 実用新案権 民事訴訟「靴載置用棚板」平成24年3月14日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120323120634.pdf)について取り上げます。


 本件は、実用新案権侵害差止等請求控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、争点2(被控訴人各商品が本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 井上泰人、裁判官 荒井章光)は、


『2争点2(被控訴人各商品が本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について

(1)特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,?当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,?当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,?このように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,?対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,?対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,当該対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。


 そして,この理は,実用新案登録請求の範囲に係る技術的範囲についても同様に妥当するものというべきである。


(2)これを本件についてみると,本件考案の技術的意義は,前記のとおり,棚板を跳ね上げて靴を容易に取り出すことができるほか,棚板は必要に応じて着脱可能であって,希望する位置に設置することが可能であるのみならず,横桟部材をガイドにして,棚板を横桟部材に取り付けたまま横にスライドさせたり,棚板を横桟部材に付け替えたりすることによって,ブーツのような丈の長いものを避けた場所に棚板を設けることができることにあり,そのために,横桟部材を靴収納庫に設置したままの状態で着脱可能な形態の掛合部を採用するものである。


 そして,本件考案における「掛合部」の形状を,被控訴人各商品のように横桟部材を貫通させる穴の形状に置き換えると,横桟部材を取り外さない限り,棚板を着脱することができないことは,争点1において先に述べたとおりである。


 したがって,被控訴人各商品は,上記?の均等の要件を充足するものと認めることはできない。


 この点について,控訴人は,本件考案の中核的な作用効果は,靴収納庫内に設けられた靴収納用棚板の上下に靴を収納する従来技術において,棚板下部に収納した靴が取り出しにくいという課題を解決するため,同棚板が接合されている靴収納庫内の横桟部材を回転中心として跳ね上げ姿勢の体勢をとることができるようにし,あるいは同棚板を横桟部材の長手方向に摺動可能としたことにあるなどと主張する。


 しかしながら,本件考案は,靴の取り出しの困難性を解消することのみならず,効率的に靴の収納スペースを確保することをも目的とするものであることは,本件明細書の記載から明らかである。控訴人の主張は,本件考案の目的のうち,その一部のみを恣意的に取り上げて強調するものにすぎず,相当ではない。


(3)以上からすると,被控訴人各商品は,少なくとも,均等侵害を成立させるための前記?の要件を具備しないので,被控訴人各商品における棚板の円形の穴が本件考案の「掛合部」に均等なものとして,本件考案の技術的範囲に属すると認めることもできない。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。