●平成23(行ケ)10191 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成23(行ケ)10191 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ポリウレタンフォームおよび発泡された熱可塑性プラスチックの製造」平成24年2月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120229164000.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が認容された事案です。

 本件では、付言の内容が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 池下朗、裁判官 武宮英子)は、

『5 付言

 当裁判所は,審決には,上記2ないし4において判断した他,次の点に問題があると解する。すなわち,一般に,審決が,「本件訂正発明が甲1に記載された発明に基づいて容易に想到することができたか否か」を審理の対象とする場合,?引用例(甲1)から,引用発明(甲1に記載された発明)の内容の認定をし,?本件訂正発明と甲1記載の発明との一致点及び相違点の認定をした上で,?これらに基づいて,本件訂正発明の相違点に係る構成について,他の先行技術等を適用することによって,本件訂正発明1に到達することが容易であったか否か等を判断することが不可欠である。特に,本件においては,引用例の記載事項のいかなる部分を取捨・選択して,引用発明(甲1に記載された発明)を認定するかの過程は,引用発明として認定した結果が,本件訂正発明と引用発明との相違点の有無,技術的内容を大きく左右するという意味において,極めて重要といえる。


 しかし,本件において,審決では,引用発明の内容についての認定をすることなく(甲1の記載を掲げるのみである。),また本件訂正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定をすることなく(相違点が何であるか,相違点が1個に限るのか複数あるのか等),甲1の文献の記載のみを掲げて,本件訂正発明1の容易想到性の有無の判断をしている。


 当裁判所は,審決には,原告主張に係る取消事由2及び4の誤りがあるとして,審決を取り消すべきものと判断したが,差し戻した後に再開される審判過程において,引用例記載の発明の認定及び本件訂正発明と引用例記載の発明との相違点等について,別途の主張ないし認定がされた場合には,その認定結果を前提として,改めて,相違点に係る容易想到性の有無の判断をした上で,結論を導く必要が生じることになる旨付言する。』