●平成23(行ウ)535 決定処分取消請求事件 特許権

 本日は、『平成23(行ウ)535 決定処分取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月16日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120220140006.pdf)について取り上げます。


 本件は、PCT出願の却下処分に対する決定処分取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 大西勝滋、裁判官 石神有吾)は、


『1(1) 原告は,本件取下書の提出によって,本件国際特許出願に関する2007年(平成19年)1月23日を優先日とする優先権主張は取り下げられたものであり,その結果,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日は,本件国際出願の国際出願日である2008年(平成20年)1月23日に繰り下がることとなり,ひいては,本件国際特許出願についての国内書面提出期間(特許法184条の4第1項)の満了日も平成22年7月23日に繰り下がることとなる旨主張する。


 そこで,原告による本件取下書提出の効果について検討するに,前記争いのない事実等(1)ないし(3)のとおりの本件国際特許出願に係る事実経過からすれば,?原告は,2008年(平成20年)1月23日,特許協力条約3条に基づいて,同条約8条に基づくパリ条約による優先権主張(優先権主張日・2007年(平成19年)1月23日(米国における先の出願の特許出願日))を伴う本件国際出願(受理官庁・欧州特許庁)をしたこと,?本件国際出願は,日本において,特許法184条の3第1項の規定により,その国際出願日にされた特許出願とみなされたこと(本件国際特許出願),?本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,同法184条の4第1項ただし書の適用により,原告が本件国内書面を提出した日である平成21年7月14日から2月が経過する同年9月14日までであったことが認められる。


 しかるところ,原告は,当該提出期間の満了日までに上記翻訳文をいずれも提出しなかったのであるから,特許法184条の4第3項の規定により,当該満了日が経過した時点で,本件国際特許出願は取り下げられたものとみなすものとされる。


 そうすると,原告が本件取下書を特許庁長官に提出した平成22年1月22日の時点においては,本件国際特許出願は,既に取り下げられたものとされ,そもそも特許出願として特許庁に係属していないこととなるから,当該出願に関して,優先権主張の取下げを含む特許庁における法律上の手続は,およそ観念することができないというべきである。


 してみると,原告による本件取下書の提出をもって,本件国際特許出願に関する優先権主張の取下げの効果を生じさせるものと認めることはできない。


(2) なお,原告は,特許法43条1項に基づくパリ条約による優先権主張の取下げについて,現行法上認められない手続であるとした本件異議決定の判断を論難し,特許法は上記取下げを認める趣旨と解すべきである旨を主張するが,上記(1)の判断は,特許法がパリ条約による優先権主張の取下げを認めるものか否かの解釈いかんに左右されるものではないから,原告の上記主張の当否については,判断の必要を認めない。


2 以上によれば,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日が2008年(平成20年)1月23日に繰り下がり,ひいては,国内書面提出期間の満了日も平成22年7月23日に繰り下がる旨の原告の主張には理由がなく,そうすると,特許法184条の4第1項の規定によって定まる本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,平成21年9月14日(前記1(1)?)までということになり,他方,原告は当該提出期間内に上記翻訳文をいずれも提出しなかったものであるから,本件各却下処分についての原告主張の違法事由はいずれも認めることができない。他に本件各却下処分を違法なものとすべき理由も認められない。


 したがって,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。