●平成23(行ケ)10182 審決取消請求事件 特許権「問診票入力システ

 本日は、『平成23(行ケ)10182 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「問診票入力システム」平成24年2月21日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120224085059.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件であって、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審決取消訴訟における新たな証拠の提出についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知材高裁(第1部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 東海林保、裁判官 矢口俊哉)は、

『(ウ)相違点3についての判断の誤りにつき

a本願の出願時(平成14年4月30日)において,携帯端末機器は周知であり,固定的に設置された端末機器に代えて,携帯端末機器を採用することにより,場所を問わずに必要な情報を入力したり,必要な情報を表示・確認したりすることが可能となることも周知であるから,固定的に設置された端末機器に代えて携帯端末機器を採用することは当業者が必要に応じて採用し得ることである。そうすると,引用発明においても入力機器を携帯型とすることに動機付けが存在するといえる。


 そして,前記乙3文献及び乙4文献の記載内容からすれば,通信機能を備え,タッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末は周知技術であったと認められるところ,引用例4には,医療機関において,患者が利用する端末機を携帯型とすることが記載されているから,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知のタッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末を採用して相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。


 そうすると,相違点3は,引用発明に引用例4の技術的事項を適用し,その際に周知の携帯端末を採用することにより当業者が容易に想到し得るものであるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。


bこの点に関し原告は,乙3文献及び乙4文献における被告による指摘事項は明らかに周知技術ではなく,新たな拒絶理由についての引用例としての性格を有するものであるから,審決の後に反論の機会を与えずに周知技術であると認定することは,特許法159条2項において準用する同法50条1項及び17条の2第1項1号の規定に違反するものであると主張する。


 しかし,公開日が本願出願日の約3年前である平成11年7日2日である乙3文献に,「本発明の目的は,セルラー電話機を有し,マウスなどのポインティング装置を必要としない指タッチ操作用高解像度タッチ画面ディスプレイを有するインテリジェント型携帯通信装置を提供することである。」(段落【0007】)と記載され,公開日が平成12年12月7日である乙4文献に「ここで,上記のようなハードウエア構成を有する携帯端末1002としては,例えば,通信機能を有する携帯情報端末(PDA)がある。このようなPDAは,典型的には,送受信装置1009としてPHS端末を,表示装置1012として液晶パネルを,入力装置1015としてタッチパネルを持っている。」と記載され,携帯情報端末(PDA)の入力装置がタッチパネルであることが「典型的」とされていることからすれば,本願の出願当時(平成14年4月30日),タッチパネル式の持ち歩けるような携帯端末が周知技術であったことは明らかである。


 そして,審決取消訴訟においては,審判手続において表れなかった資料を新たに証拠として提出することは原則として許されないが,いかなる例外もなく絶対に許されないというわけではなく,例えば,当業者にとつては,刊行物をいちいち挙げるまでもないほどの周知慣用の事項について,審決取消訴訟の段階で,これを立証するために補充的に新たな資料を提出することは許されるというべきであるから(最高裁昭和55年1月24日判決・民集34巻1号80頁参照),被告が周知技術である乙3文献及び乙4文献記載の技術的事項を本件において提出したことは手続違背となるものではない。


 したがって,原告の上記主張は採用することができない。』

 と判示されました。

 なお、本件中で引用されている最高裁事件は、

●『昭和54(行ツ)2 審決取消 実用新案権 行政訴訟「食品包装容器事件」昭和55年01月24日 最高裁判所第一小法』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121522946823.pdf

 になります。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。