●平成23(ネ)10049 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴

 本日は、『平成23(ネ)10049 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年12月8日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111212120351.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、まず、争点2(プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 齋藤巌)は、

『2 争点2(プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無)について

・ 本件プログラムについて

ア 控訴人は,控訴人が作成したとする本件プログラム又はその複製物が存在すること,本件プログラムの具体的な表現及びその表現上の具体的な創作性について,何らの立証をしていない。


イ 控訴人は,本件プログラムの内容は,本件発明の特許公報(甲2)に明示されていると主張する。


 しかしながら,著作権法にいう「プログラム」とは,電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものであり(同法2条1項10号の2),同じく「著作物」とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。


 したがって,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう発明(特許法2条1項)について,発明を特定するために必要と認める事項の全てが記載された特許請求の範囲や,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載した発明の詳細な説明(同法36条4項,5項)に記載されたものがあるからといって,直ちに,思想又は感情を創作的に表現したプログラムの著作物が存在することにはならない。


ウ また,控訴人は,本件発明の新規性が認められる以上,本件プログラムの創作性も当然認められると主張する。


 しかしながら,原判決別紙プログラム目録記載の内容は,プログラムの具体的な「表現」を表すものではなく,また,特許法著作権法の目的や保護対象が異なることに照らして,控訴人の上記主張を採用することはできない。仮に,控訴人の主張する構成要件G(逆展開無限階層で得る一連コードや多数の属性データをキーにする,各種情報の統合データベースの運用システム)が画期的なものであるとしても,直ちにプログラムの著作物の「表現上の創作性」が肯定されるわけではない。


・ 原審の審理経過について

 控訴人は,原審の審理経過について,るる主張するが,仮に控訴人主張のような経過があったとしても,控訴人としては,原判決の判断内容に照らして,必要であれば,更なる主張立証を行うべきであったし,これを行うことが可能であった。しかるに,控訴人の当審における主張立証によっては,本件プログラムの存在や創作性を認めるに足りず,以上の認定判断が妨げられるものではない。


・ 小括

 以上のとおり,控訴人の著作権侵害に基づく請求についても,理由がない。』