●平成22(ワ)40331 特許権侵害差止等請求事件「移動体の操作傾向解

 本日は、『平成22(ワ)40331 特許権侵害差止等請求事件「移動体の操作傾向解析方法,運行管理システム及びその構成装置,記録媒体」平成23年11月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111205110541.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が特許法104条の3の権利行使の制限の規定によって棄却された事案です。


 本件では、時機に後れた攻撃防御方法であるとの原告の主張および訂正を理由とする対抗主張についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳、裁判官 鈴木和典、裁判官 寺田利彦)は、


『2 特許法104条の3第1項の権利行使の制限について

 本件事案に鑑み,無効理由4から判断する。


 ・・・省略・・・


 したがって,本件発明2の相違点に係る構成は,引用発明2に乙2及び乙3に記載された上記周知の技術的事項を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものと認められる。


(5) 以上のとおり,本件発明1,2は,当業者が引用発明1,2に乙2及び乙3に記載された周知の技術的事項を組み合わせることによって容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。


(6) 時機に後れた攻撃防御方法であるとの原告の主張について

 原告は,無効理由4に係る被告の無効主張は時機に後れた攻撃防御方法であるから却下すべきと主張する。


 しかしながら,当該無効主張は,平成23年7月13日の第4回弁論準備手続において,同月12日付け被告準備書面(4)をもってなされたものであるところ,同時点では,いわゆる二段階審理における侵害論についての審理中であったから,当該無効主張についての審理がなければ直ちに弁論を終結できる段階になく,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものとは認められない。原告は,無効審判請求の審理が終結した後に新たに無効主張を追加することは,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすと指摘するが,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものと認められないことは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。


3 訂正を理由とする対抗主張について

 原告は,平成23年9月22日付け原告第6準備書面をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属すると主張し,これに対し,被告は,原告の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。


 そこで検討するに,原告の上記対抗主張は,前記平成23年7月12日付け被告準備書面(4)をもってなされた無効理由2〜4に対するものであるところ,受命裁判官は第5回弁論準備手続期日(同年8月5日)において,原告に対し,上記無効理由についても審理するので,これに対する反論があれば次回までに提出するよう促し,反論の機会を与えたにもかかわらず,原告は,第6回弁論準備手続期日(同年9月9日)までに上記対抗主張をすることなく,同期日で弁論準備手続を終結することについても何ら異議を述べなかったものである。


 無効理由2及び3は,いずれも既出の証拠(乙2及び乙3)を主引用例とする無効主張であり,無効理由4も,平成14年5月20日付け特許異議申立てにおいて既に刊行物として引用されていた乙6に基づくものであるから,原告は,上記無効理由の主張があった第4回弁論準備手続期日から弁論準備手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無効審判請求書副本の送達日である平成23年8月19日から答弁書提出期限である同年10月18日までの期間のみであると主張するが,本件訴訟において対抗主張を提出することはできたものというべきである。原告は,対抗主張が認められる要件として現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要とする見解が多数であるとも主張するが,訂正審判請求前又は訂正請求前であっても,訴訟において対抗主張の提出自体が許されないわけではなく,理由がない。)にもかかわらず,これを提出せず,弁論準備手続の終結後,最終の口頭弁論期日になって上記対抗主張に及ぶことは,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。


 よって,原告の上記対抗主張は,民事訴訟法157条1項によりこれを却下する。


4 まとめ

 以上のとおり,本件発明は,当業者が引用発明に乙2及び乙3に記載された周知の技術的事項を組み合わせることによって容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。


 したがって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。