●平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件「ロータリーディスクタン

 本日は、『平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵平成23年11月25日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111129115433.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点(3)(無効主張に対する対抗主張)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳、裁判官 鈴木和典、裁判官 寺田利彦)は、

『2争点(3)(無効主張に対する対抗主張)について

(1)本件補正

ア原告は,本件特許に係る無効審判請求事件(無効2010−800013)において,本件訂正請求を行っているが,その後,本件訂正請求に係る訂正請求書について,本件補正を行っていることから,まず,本件補正の適否から検討する。


イ本件補正に係る手続補正書(甲41)によれば,本件補正のうち,本件特許発明に関係する部分は,次のとおりである(下線は補正部分を示す。)。


 ・・・省略・・・


ウ上記イのとおり,原告は,本件補正において,?「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の」を削除し,?「上下方向の開口端縁に」を「開口端縁に」に改め,?「係合突起」を「上からの係合突起」に改める補正を行っている。


 ところで,訂正請求に係る請求書の補正は,その要旨を変更するものであってはならないところ(特許法134条の2第5項,131条の2第1項本文),上記?,?の補正は,訂正事項を従前のものから変更するもので,従来の請求に代えて新たな請求をするものというべきであるから,本件訂正請求に係る訂正の内容を変更するものとして,訂正請求書の要旨を変更するものといわざるを得ない。したがって,本件補正は,上記規定に違反するものとして許されない。


(2)本件訂正請求

ア上記(1)のとおり,本件補正は不適法なものとして許されないから,これがなかったものとして,本件訂正請求の適否について検討する。


イ本件訂正に係る訂正請求書(甲40)によれば,本件訂正のうち,本件特許発明に関係する部分は,次のとおりである(下線は訂正部分を示す。)


 ・・・省略・・・


ウ上記イのとおり,原告は,本件訂正請求において,次の訂正を行っている。


(ア)特許請求の範囲について,

a「鍵孔」を,「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」と訂正。
b「剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を,「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラー」と訂正。
c「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」を,「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」と訂正。
d「合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起」を,「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」と訂正。
e「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」を,「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」と訂正。


f「各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」を,「該タンブラー群が前記摺り鉢型の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」と訂正。


(イ)課題を解決する手段(【0018】)において,

g上記訂正事項a〜fに対応する訂正。


特許無効審判における訂正の請求は,?特許請求の範囲の減縮,?誤記又は誤訳の訂正,?明瞭でない記載の釈明を目的とするものに限って許されるものである(特許法134条の2第1項)ところ,前示1のとおり,本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。


 したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。


3結論

 以上検討したところによれば,本件特許発明に係る本件特許は,特許法123条1項2号により,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。


 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。』

 
 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。