●平成22(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権「赤外活性皮膜とそ

 本日は、『平成22(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「赤外活性皮膜とその成膜方法」平成23年10月4日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111006134906.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(補正の適否に関わる判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、裁判官 田邉実)は、

『1 取消事由1(補正の適否に関わる判断の誤り)について

 審決は,本件補正は「請求項の数を増加させる」もので,「請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しないから,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(旧法)17条の2第4項の規定に違反し,旧法159条1項で準用する旧法53条1項の規定により却下すべきである」と判断したが,原告は,出願当初の請求項6項から1項を減じて,本件補正では請求項を5項としたものであるし,本件補正に係る請求項5は出願当初の請求項6を繰り上げたものであって,請求項を4項から5項に増加させてはいないと主張する。


 平成20年11月25日付け手続補正書(乙12)のとおり,原告は拒絶査定不服審判請求後の本件補正において,請求項5項を追加したものであるところ,かかる請求項の追加は,原則として,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(旧法)17条の2第4項所定の「第36条第5項に規定する請求項の削除」(1号),「誤記の訂正」(3号),「明りようでない記載の釈明」(4号)に当たるものではない。本件補正についてみるに,この追加された請求項5の特許請求の範囲は,「前述の赤外活性皮膜を溶射法によって形成するも,この場合,溶射直後の溶射皮膜をクェンチ(急冷)することによって,それぞれの皮膜を形成することを特徴とする,請求項1乃至請求項4に記載の赤外活性皮膜の成膜方法。」というものであるところ,これは,物の発明である請求項1ないし4に,別種の発明の範疇である方法の発明に属する請求項(5項)を加えるものであって,直ちに「特許請求の範囲の減縮」に当たるとすることはできない。本件補正前の請求項1ないし4においては,皮膜の形成方法につき何ら特定がされていないから,請求項5にいう形成方法の特定をもって,減縮となるための要件とされている「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」(旧法17条の2第4項2号括弧書き)に当たるとするのも困難である(本件補正の前後で請求項が1対1の関係に当たるとみることもできない。)。そうすると,本件補正は「特許請求の範囲の減縮」(旧法17条の2第4項2号)にも当たるものではない。


 したがって,本件補正を却下した審決の判断に誤りがあるとはいえない。


 また,特許庁が発した審査前置移管通知(甲6)や審査官が作成した前置報告書(乙16)は,本件補正の適法性を前提とするものではなく,単に適法でない補正について検討がされたにすぎないものであることが明らかであるから,審査前置措置や前置報告書等の違法をいう原告の主張は失当である。よって,本件補正の適否に関わる判断の誤りをいう原告の取消事由1は理由がない。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。