●平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件「固定式消火設備」

 本日も、『平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件「固定式消火設備」平成23年9月22日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110927134242.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点(2)(損害額)および争点(3)(差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 西田昌吾)は、

『4争点(2)(損害額)について

(1)販売台数

 乙18ないし20,23及び24によると,被告製品の販売台数は,被告モリタユージーが10台,被告モリタ防災テックは11台であることが認められる。


(2)被告2名の行為により得られた利益

 乙21ないし23によれば,被告製品の販売額は,被告モリタユージーによるものが合計473万8290円であり,被告モリタ防災テックによるものが合計872万0720円であることも認められる。また,被告製品を販売した際の利益率がいずれも20%であることは,当事者間で争いがない。

 ところで,被告モリタ防災テックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,その製造・販売により,被告2名による共同不法行為が成立するといえる。


 そうすると,被告製品の販売により,被告モリタユージーが単独で得た利益は94万7658円であり,被告2名が得た利益は174万4144円である。

(3)本件特許発明が被告製品の販売に寄与したかについて

 被告らは,本件特許発明が被告製品の販売に寄与していなかったと主張する。


 そこで検討すると,本件特許発明は,その技術的構成自体からして消火設備の設置場所に係る選択の自由度を高める一定の作用効果を奏することが明らかである。


 これに対し,乙25及び弁論の全趣旨によれば,被告製品が販売されるに当たり,本件特許発明に係る技術的構成が広告宣伝されるなどしてはいなかったことが認められる。また,上記のとおり被告製品の販売台数が少ないことや販売期間も短期間にとどまることが認められ,これら一切の事情を考慮すれば,本件特許発明が被告製品の販売に寄与した程度は,4割の限度で認めるのが相当である。


(4)損害額

 以上によると,特許法102条2項の算定に基づき,被告モリタユージーが支払うべき損害額は,107万6720円であり,被告モリタ防災テックが支払うべき損害額は,69万7657円である。


〔計算式〕(947,658+1,744,144)×0.4=1,076,720
 1,744,144×0.4=697,657

 前記(2)のとおり,被告モリタ防災テックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,被告モリタユージーは,被告モリタ防災テックと連帯して損害賠償責任を負うというべきであるが,他方において,被告モリタ防災テックが被告モリタユージーの販売した被告製品について連帯責任を負う理由はない。


 したがって,被告モリタユージーは,上記69万7657円の限度で,被告モリタ防災テックと連帯して支払義務を負うこととなる。


5争点(3)(差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否)について

 被告らの主張によれば,被告モリタユージーは,被告製品8台を現在も保管しているというのであるから,被告モリタユージーに対し,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を命じる必要性はあると認められる。


 他方において,上記のとおり,被告モリタ防災テックは,被告モリタユージーから購入した被告製品を販売したにすぎず,その在庫も有していないから,被告モリタ防災テックに対する製造販売の差止め及び製品の廃棄を命じる必要性があるとは認めるに足りない。


 また,本件で被告2名の行為により原告の業務上の信用が侵害されたことに関する立証はないから,謝罪広告を命じる必要性があると認めることもできない。』

 と判示されました。