●平成22(ワ)2723 損害賠償請求事件「包丁研ぎ器」(2)

 本日も、『平成22(ワ)2723 損害賠償請求事件「包丁研ぎ器」平成23年8月25日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110831103921.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点2(被告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態か)および争点3(被告は,被告商品の輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか)についての判断も参考になります。

 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 西田昌吾)は、

『2 争点2(被告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態か)について

 研ぎ器には,多種多様な形態の刃部及び柄部並びにその組合せが考えられ,実際にも,多種多様な形態の商品が市場に流通している(甲43,44,46,甲47の2・3,乙6の1・2,乙16の1・2の別紙,乙21)。そして,各研ぎ器は,いずれも,研ぎ器としての機能が確保されているからこそ市場に流通していると考えられるのであって,被告商品の形態のみが,商品の機能を確保するために不可欠な形態であるということはできない。

 なお,被告は,原告商品の形態は,ありふれたものであると主張するが,証拠上,原告商品の販売開始時において,原告商品の形態がありふれたものであった事実は窺われない。


3 争点3(被告は,被告商品の輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか)について

 被告は,被告商品の取扱いを開始した経緯について,浙江省義烏の福田市場で商品を発見し,製造元であるA社を探し出して売買契約を締結したと説明しているが(乙17),この事実は,被告が,原告商品を知らなかったことを裏付けるものではなく,知らなかったことについて重過失がなかったことを裏付けるものでもない。

 また,被告は,被告商品の売買契約を締結するにあたり,A社に対し,同社が同商品に関するすべての権利を有していることを直接確認したと主張し,被告代表者はこれに添う供述をするが,売主の言を信じたというだけでは,商品の輸入販売を行う業者として,重過失がなかったということはできない。

 そもそも,現時点でも,A社の説明する内容(乙13の1・2)は,A社が原告商品の形態について何らかの権利を取得する説明となっていない(前記1(2)ア)にもかかわらず,被告としては,A社に対し,その説明する内容の根拠について,何ら確かめることをしなかったものである。

 そして,被告商品の輸入にあたり,被告が,商品の権利関係について自ら何らかの調査を行った事実は認められないから,むしろ,被告は,輸入業者としての,基本的な注意義務さえ怠っていたと評価できる。

 以上のことからすれば,被告が,被告商品の輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったとは認められない。』

 と判示されました。