●平成22(行ケ)10349 審決取消請求事件 特許権「シート材料を引き

 本日は、『平成22(行ケ)10349 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「シート材料を引き裂くためのカッター刃」平成23年8月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110829114857.pdf)について取り上げます。

 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。

 本件では、本願発明の解釈が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官  郄部眞規子 、裁判官 齋藤巌)は、

『2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について

(1) 本願発明の解釈について

ア 前記のとおり,本件出願の請求項1は,「シート材料を切断するためのブレードであって,前記ブレードは,ブレード本体と前記ブレード本体から外方に向かって突出する複数の別々の歯を備え,前記別々の歯は,それぞれ,限定された歯半径と,約0.005インチ以下の歯の半径,約0.050インチ以下の歯のピッチ,0,006インチ以下の歯の厚さ,およびこれらの組合せからなるグループから選択された少なくとも1つの歯のパラメータを有する点を特徴とするブレード」というものであり,ブレード本体から外方に向って突出する歯について,「約0.005インチ以下の歯の半径,約0.050インチ以下の歯のピッチ,0,006インチ以下の歯の厚さ,およびこれらの組合せからなるグループから選択された少なくとも1つの歯のパラメータを有する」ものと特定している。


イ また,本願明細書を参酌すると,同明細書には,「本発明に従った刃は,優れた切断能力を提供するために選択及び最適化されている刃の設計要因を使用している。歯の要因P(歯のピッチ),R(歯の半径)及びT(歯の厚さ)は,優れた切断能力を発揮するための成功する歯と刃の設計を決定することにおいて重要であることが現在信じられている。従って,本発明に従った刃は,ここに明示されている原理に従って設計された歯を含み,そして少なくとも1つ,より好ましくは少なくとも2つ,及び最も好ましくは3つの最適化された歯の要因P,R及びTを組み込んでいる。」と記載されている。

請求項1の上記文言や本願明細書の上記記載内容からすると,本願発明は,ブレードの歯に関する「約0.005インチ以下の歯の半径」,「約0.050インチ以下の歯のピッチ」及び「0.006インチ以下の歯の厚さ」という3つのパラメータのうち,1つのパラメータにだけ該当するブレード(刃)を含むものであると認めるのが相当である。

エ この点に関し,原告は,本願発明は上記パラメータの全てを満たすことを内容としたものであり,これらのパラメータが所定の範囲内の値に規定されることにより,歯の単位面積あたりの貫通圧力の増加と使用者に対する安全性の向上を同時に図ることができるという顕著な作用効果も奏されるものであるなどと主張する。

 しかしながら,原告の主張は,請求項1の上記文言や本願明細書の上記記載内容に明らかに反するものであり,これを採用することはできない。

(2) 相違点1について

 前記のとおり,本願発明は,ブレードの歯に関する「約0.005インチ以下の歯の半径」,「約0.050インチ以下の歯のピッチ」及び「0.006インチ以下の歯の厚さ」という3つのパラメータのうち,1つのパラメータのみに該当するブレード(刃)を含むものと認められるところ,引用発明1の歯山のピッチは,1.08?(0.0425インチ)であり,歯山の厚さは0.25から0.15?(0.00984から0.00591インチ)であるから,歯山のピッチは,本願発明の歯のピッチに係るパラメータに該当し,また,歯山の厚さは,本願発明の歯の厚さに係るパラメータに該当する数値を含むものであるといえる。さらに,引用発明1の歯山先端の半径Rについてみると,本件審決が認定した「0.06?(0.00236インチ)以下」であっても,上記1で認定した「0.04?から0.06?(0.00158インチから0.00236インチ)」であっても,いずれにしても本願発明の歯の半径に係るパラメータに該当することは明らかである。

 したがって,引用発明1は,本願発明の上記3つのパラメータのうち,1つ以上のパラメータに該当するものであるから,結局,本願発明と引用発明1は相違しないものと認められる。

(3) 以上からすると,本願発明は,引用発明1と実質的に相違しないとした本件審決の判断に誤りはなく,取消事由2には理由がない。