●平成20(ワ)831 特許権侵害差止等請求事件「動物用排尿処理材」

 本日は、『平成20(ワ)831 特許権侵害差止等請求事件「動物用排尿処理材」 平成23年8月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110829161217.pdf)について取り上げます。

 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。

 本件では、争点4(原告の損害額)における(1)被告の不法行為責任についての判断も参考になります。

 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 大西勝滋、裁判官 上田真史)は、

『4争点4(原告の損害額)
(1) 被告の不法行為責任

ア 前記1認定のとおり,被告各製品(前記3の製造方法の変更後の構成のものを除く。以下同じ。)は本件発明の技術的範囲に属するから,被告による平成19年9月1日から平成21年9月30日までの間の被告各製品の製造及び販売は,本件発明に係る本件特許権の侵害行為に当たり,被告には,その侵害行為について少なくとも過失があったものと認められる。


 したがって,被告は,本件特許権の侵害行為により,原告が被った損害を賠償すべき不法行為責任を負うというべきである。


イ この点に関し被告は,原告と被告は,平成11年11月19日,原告が被告に対し本件特許権について通常実施権を許諾する旨の本件通常実施契約を締結し,その後,本件通常実施契約は,原告及び被告間の黙示の合意により1年ごとに更新され,平成18年11月19日の最終更新により平成19年11月19日まで存続していたから,同日までの間における被告各製品の製造及び販売は,上記通常実施権に基づくものであり,本件特許権の侵害行為に当たらない旨主張する。

 そこで検討するに,原告と被告が,平成11年11月19日,本件特許権について,期間を1年,範囲を全部,地域を日本全土として,原告が被告に対し通常実施権を許諾する旨の契約(本件通常実施契約)を締結したことは,当事者間に争いがない。

 しかし,他方で,?本件通常実施契約に係る契約書(甲6)中には,実施料について,平成11年11月1日から平成12年10月31日までの1年間,月額20万円とし,「本契約」が更新される場合の実施料は協議の上取り決める旨の条項(3条),被告は,本件特許の効力を自ら争い,第三者をして争わせ,あるいは第三者が争うのを援助してはならない旨の条項(5条),「本契約」の更新は契約当事者の協議によりこれを定め,両当事者の合意による更新が成立しない場合,契約期間の満了により「本契約」は終了する旨の条項(12条)があること,?本件通常実施契約の当初の契約期間の満了後に,被告が原告に実施料を支払ったことをうかがわせる証拠は提出されておらず,かえって,被告は,平成19年8月19日付けで本件特許に対し無効審判請求(本件無効審判請求1)をし,さらに,本訴における被告の補佐人弁理士であるA1が同月28日付けで本件特許に対し無効審判請求(本件無効審判請求2)をし,仮に本件通常実施契約が存続しているとするならば債務不履行となるような行動をとり,このように本件通常実施契約が存続することと矛盾する行為をとりながら特段の説明をしていないことに照らすならば,少なくとも,被告が主張するような原告及び被告間の黙示の合意により平成18年11月19日に本件通常実施契約が更新されたものと認めることはできない。

 したがって,平成19年11月19日までの間における被告各製品の製造及び販売が本件特許権の侵害行為に当たらないとの被告の上記主張は,採用することができない。』


 と判示されました。