●平成23(行ケ)10057 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「溝穴付

本日は、『平成23(行ケ)10057 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「溝穴付き蓋」平成23年07月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110728141705.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 池下朗、裁判官 武宮英子)は、

『1 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について

 当裁判所は,本件補正について,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法17条の2第3項所定の要件を充足していないと判断する。その理由は,以下のとおりである。すなわち,請求項1に係る本件補正は,「ネジ嵌合する容器の蓋であって,前記する蓋の上面に適度な幅と深さの溝穴を,前記した蓋の一方側端部から中心部を経て対向側端部に至るように溝穴を設けた構成を特徴とする溝穴付き蓋。」を「ネジ嵌合する容器の蓋であって,前記する蓋の上面を厚くし,この上面の一方の側端部から中心部を経て対向側端部に至るように直線状に略板状体等が嵌め込める溝穴を設け,この溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け,段差状溝穴として設けたことを特徴とする溝穴付き蓋。」とするものである。

 ところで,?別紙実施例図面のとおり,願書に最初に添付した本願明細書の段落【0012】ないし【0015】,図1ないし3,図5には,所定の幅と深さの溝穴6を直線状に設ける実施例が記載されるほか,幅が異なる二つの溝穴6,6aを十字状に交差させる実施例が図示されているが,同図面からは,直線状の溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け,段差状の溝穴とする技術は,開示又は示唆はされておらず,また,?本願明細書の段落【0016】における「上面4に設ける溝孔6,6aの幅や深さはもとより,さらに異なる幅のものを2本以上設けても構わない」と記載されているが,同記載からは,上記段差状の溝穴を設ける技術は,開示又は示唆はされていない。したがって,本件補正により付加された事項である「直線状の溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け,段差状の溝穴とすること」は,願書に最初に添付した本願明細書に記載されておらず,当業者にとって自明の事項ともいえないというべきである。

 以上のとおりであり,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断した審決に誤りはない。

 この点について,原告は,「幅の異なる溝穴においてわずかに高低があること」を「段差状」と表記したのであるから,このような構成を付加して,補正をすることは許されるべきである旨主張する。しかし,補正後の特許請求の範囲(請求項1)には,「この溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け,段差状溝穴として」と明確に記載されている以上,付加した技術事項は明白であって,原告の主張は前提を欠き,採用の限りでない。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。