●平成22(ワ)11899 不正競争行為差止等請求事件

本日は、『平成22(ワ)11899 不正競争行為差止等請求事件 平成23年07月14日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110727111421.pdf)について取り上げます。

 本件は、不正競争行為差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。

 本件では、不正競争防止法2条1項3号および19条1項5号イの判断が参考になるかと思います。

 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 西田昌吾)は、


『1 本件の事案の内容に鑑み,まず,争点2について検討すると,この点に関する被告らの主張には理由がある。以下,詳述する。

(1) 法2条1項3号は,他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為に当たるとしたものである。その趣旨は,法1条の事業者間の公正な競争等を確保するという目的に鑑み,開発に時間も費用もかけず,先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売し,投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは公正とはいえないから,そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。

 このことからすれば,最初に販売された日の起算点となる他人の商品とは,保護を求める商品形態を具備した最初の商品を意味するのであって,このような商品形態を具備しつつ,若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないと解すべきである。

 そして,仮に原告が主張するとおり,原告商品が原告先行商品の改良品や部分的な手直し品ではなく,新しい商品であるとすると,この場合に法2条1項3号による保護を求め得るのは,原告商品の形態のうち,原告先行商品の形態と共通する部分を除外した固有の部分に基礎をおくものでなければならないというべきである。

 本件で,原告が,原告先行商品のうち「コスモバスケット L」を平成11年2月から販売していたことは,前提事実(2)のとおりである。そうすると,原告先行商品と原告商品の形態が実質的同一である場合には,原告商品の形態の模倣は,法19条1項5号イに該当するというべきである。

(2) 原告先行商品と原告商品の形態の対比

 法2条4項によれば,商品の形態とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。

 これを前提として,以下原告先行商品と原告商品の形態が実質的同一といえるか否かについて検討する。

ア 原告先行商品と原告商品の形態について,以下の点が共通していることは当事者間で争いがない。

 ・・・省略・・・

イ 次に,相違点について検討する。

(ア) 形態上の相違点

 原告が主張する形態の差違は,? 透孔が,原告先行商品は1個の輪の形状であるのに対し,原告商品は輪郭が明確な2個の輪の形状であること,? 取っ手の形状が,原告先行商品の中空外側部端縁外面が平坦であるのに対し,原告商品では半円紐状であること,? 底面リブの形状が,原告先行商品は内外リブともに断面半円の太さ(幅,高さ)が同じであるのに対し,原告商品は断面半円の幅と高さについて外リブが大きく,内リブは小さくなっていることである。

 これらの点について検討すると,まず,? 透孔が二重であるという点は,丙2及び12によれば,二重であるというよりも,むしろ透孔の内側端が外から中心に向かって傾斜していると表現すべき形状である。

 これは,注意して見なければ認識できない程度の僅少な差違にすぎない。しかも,丙1及び6によれば,この特徴は,傾斜の程度に差こそあれ,他の同種商品にもみられる特徴であることが認められる。

 次に,? 取っ手の形状についてみると,丙2及び12によれば,平坦であるか半円の紐状であるかは,説明されなければ認識できないほどの形状の差である。これをもって,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる形状であるとはにわかに認めがたい。また,丙1及び4によれば,平成20年3月以前に,取っ手が半円状の同種のバスケットが販売されていたこと,丙8によれば,同様の意匠登録がされていたこともそれぞれ認められる。そうすると,これは,同種の商品に共通する何の特徴もないごくありふれた形態であるというべきである。

 また,?の底面リブも,原告商品における内外リブの幅及び高さの差は僅かである上,底面に配設されたものであるから,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる形状であるとも認めがたいものである。

(イ) 厚さ,質感
 証拠(丙2,12)及び弁論の全趣旨によれば,原告先行商品と原告商品との厚みの差は,わずか2?ないし4?程度であり,知覚によって認識することができる質感には,大きな差はないことが認められる。

(ウ) 用途の違い
 原告が主張する用途の違いは,形態について検討するに当たっては問題とならないというべきである。そもそも,いずれの商品も容器として使用されるものであることには違いがなく,どのような物を収納して使用するかは需要者の自由であるから,原告が主張するような収納物の違いがあることを前提とすることはできない。

(3) 前記(2)からすると,原告が保護を求めている商品形態の構成の中心は,原告先行商品においても採用されていたものであると認めることができる。そして,原告先行商品と原告商品との形態上の差は,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができるほどの形状の差であるとは認められないか又は同種の商品に共通する何の特徴もないごくありふれた形状であるということができる。なお,原告商品と原告先行商品とでは商品の大きさが異なるから,そのことに由来する差違が存する。しかしながら,少なくとも全体的な商品の形態について従来品の形態を具備しながら,大きさのみを変更した場合に,従来品とは別の商品形態であるということはできない。上記によれば,原告商品は,全体的な商品の形態として,従来品である原告先行商品の形態を具備しているというべきであるから,大きさの違いやそのことから由来する差違をもって,別の商品形態であるということはできない。

(4) 以上によれば,原告が保護を求める商品形態を具備した最初の商品は,原告商品ではなく,原告先行商品である。前記(1)のとおり,原告先行商品のうち「コスモバスケット L」が最初に販売された日は平成11年であるから,原告商品が販売された平成20年3月時点では,最初に販売された日から3年を経過していたことが明らかである。

 したがって,被告の行為(前提事実(3))は,法19条1項5号イに該当する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。