●平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件(3)

 本日も、『平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110610142701.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点3(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか)について判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 山門優、裁判官 柵木澄子)は、


『3 争点3(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか)について


(1)証拠(甲54,甲55の1〜33,甲56の1〜33,甲67,甲68の1〜3,甲69の1〜3,甲72,乙4の1,乙4の2の1〜38)及び弁論の全趣旨によれば,被告プログラムの構成及び同構成と原告プログラムの構成との関係は,次のとおりであると認められる。


ア 被告プログラムは,両プログラム対比表記載のとおり,合計38個のファイル(被告ファイル1〜38)から構成されている。


 これら38個のファイルのうち,被告ファイル37及び38を除く合計36個のファイルは,両プログラム対比表記載のとおり,原告プログラムにおいて実際に使用されている35個のファイル(原告ファイル1〜33,38,39)と,ほぼ1対1で対応している。


イ 上記35個の原告ファイルとそれに対応する上記36個の被告ファイルとを比較すると,甲55号証,56号証,68号証及び69号証(いずれも,枝番号を含む。)中の黄色のマーカーが塗られた部分(黄色マーカー部分)は,ソースコードの記載が全く同一である。また,上記各号証中の緑色のマーカーが塗られた部分(緑色マーカー部分)は,会社名の置換え,変数名,フォーム名等に違いはあるものの,プログラムとして機能する上で,その名称の違いに意味のないものであり,実質的には同一のソースコードであるといえる。


 これらの黄色マーカー部分及び緑色マーカー部分は,上記原告ファイル及び被告ファイルの大半を占めており,その割合は,全体の90%を下らない。


(2) 上記事実関係によれば,原告プログラムと被告プログラムとは,そのソースコードの記述内容の大部分を共通にするものであり,両者の間には,プログラムとしての表現において,実質的な同一性ないし類似性が認められるものといえる。


 また,上記のとおり被告プログラムはその記述内容の大部分が原告プログラムと同一ないし実質的に同一であることに加え,被告ソフトの開発者である被告Bは,原告において原告ソフトの開発に従事していたものであり,後記4(1)のとおり,原告を退職した後,ごく短期間で膨大なソースコードより成る被告プログラムを開発していることなどに鑑みると,被告Bは,原告プログラムの内容を認識した上で,これに依拠して被告プログラムを作成したものであると認められる。

 したがって,被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものであると認められる。


(3) これに対し,被告らは,両プログラム対比表記載の各ファイル内におけるブロックの記載順序及び各ブロック中の記述の順序が異なることや,被告プログラムには原告プログラムにないコメントが多数存在することなどを挙げ,被告プログラムは原告プログラムと表現を異にするものであり,原告プログラムを複製ないし翻案したものには当たらないと主張する。


 しかしながら,プログラムのソースコードの記述は,電子計算機が必要な機能を呼び出すためのものであり,本件における原告プログラム及び被告プログラムのソースコードについては,その記述の順序が異なることは電子計算機によるプログラムの呼出し処理に影響を与えるものではない。また,ソースコード内のコメントは,プログラムの動作に影響を与えるものではない。そうすると,被告らの主張するような事情をプログラムのソースコードの実質的同一性の判断に当たって考慮すること自体は否定されないとしても,これを重視するべきではなく,本件のように両プログラムの記述内容の大部分が同一ないし実質的に同一であるというべき事案においては,両プログラムの同一性ないし実質的同一性を認めるのが相当である。


 と判示されました。