●平成22(行ケ)10246 審決取消請求事件「米糠を基質とした麹培養方

 本日も、『平成22(行ケ)10246 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「米糠を基質とした麹培養方法と玄米麹」平成23年04月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110428115853.pdf)について取り上げます。


 本件では、取消事由4(補正の適否判断の誤り)において、出願当初明細書に「酢酸」が記載されていないのに、「酢」から「酢酸」への補正が新規事項の追加に当らないと判断した点で、参考になるかと思います。


 (※むしろ、やっと特許庁審判部にて、ソルダーレジスト知財高裁大合議事件の判断基準を採用して、このような補正を新規事項の追加には当らない判断した点の方が参考になります。なお、この無効審判事件は、無効2009−800195号事件です。
)

 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 武宮英子、裁判官 齊木教朗)は、


『4 取消事由4(補正の適否判断の誤り)について


 原告は,請求項2において,出願当初は「酢」と記載されていたのを「酢酸」に変更した補正について,出願時の明細書に記載されている事項の範囲内での補正に当たらず,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。


 原告の上記主張は,請求項2について,「酢」を含む「米糠粉末」を100℃から120℃で20〜30分蒸すと,沸点が118℃である「酢」は蒸発し,「酢を使用し,PHを落とし,雑菌の繁殖を抑え」(本件明細書の段落【0008】)という目的を達し難いことから,「酢」が「酢酸」に補正されたことを前提とするが,酢には,酢酸が含まれ(甲9),酢酸の殺菌作用によって,「第一の工程に於いて,・・・雑菌繁殖を抑え」ることは明らかであるから,請求項2における「酢」の記載は,「酢酸」と実質的に同義であると解される。また,上記2(5) のとおり,請求項2の記載において,培養工程においても,「酢」又は「酢酸」による雑菌の繁殖を抑制する効果を保持していることまで示されているとはいえない。


 したがって,請求項2において,「酢」を「酢酸」に補正した点が,特許法17条の2第3項の規定に違反するとの原告の主張は失当である。』

 と判示されました。