●平成22(行ケ)10304 審決取消請求事件「MBA ENGLISH」

 本日は、『平成22(行ケ)10304 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「MBA ENGLISH」平成23年03月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110404100020.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本願商標の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号該当性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 東海林保、裁判官 矢口俊哉)は、


『 (2) 前記(1) 認定の事実に基づき,本願商標の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号該当性につき判断する。


 本願商標は,「MBA ENGLISH」の文字よりなるところ,両文字の間に一文字程度のスペースを有することから,「MBA」と「ENGLISH」の文字からなるものと容易に看取される。


 そして,構成中前半の「MBA」は,アルファベット大文字の「M」「B」「A」3文字からなるが,前記(1)ア認定のとおり,これは「Masterof Business Administration(経営学修士)」を表す略語として一般的に認識される文字であると認められる。また,後半の「ENGLISH」は「英語」を意味する語として我が国においてよく知られている文字である。そして,「MBA」と「ENGLISH」の語は,それらの語が持つ上記の意味合いからすれば,「MBAのための,MBAに特化した英語」程度の意味合いが容易に認識されるものである。


 そこで,本願商標を,その指定役務に含まれる「語学の教授,派遣による語学の教授,語学試験の実施,(語学に関する)セミナーの企画・運営又は開催,(語学に関する)電子出版物の提供,(語学に関する)書籍の制作」等の語学に関連した役務に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,「MBAのための,MBAに特化した英語」程度の意味合いを持つ語として認識し,その結果,当該取引者・需要者に,それらの役務における語学が「MBA(経営学修士)を取得するために,あるいは取得したMBAを活用するために有用な英語」との意味合いを持つ語であると認識されることは明らかである。


 そして,前記(1) エ認定のとおり,本件各インターネット記事によれば,「MBA ENGLISH」という語は,「MBA(経営学修士)を取得するために,あるいは取得したMBAを活用するために有用な英語」という程度の意味合いをもって,MBA(経営学修士)の取得を希望する者等を対象としたセミナーや大学等の講座名として使用され,あるいはMBA留学等を考えている人に役に立つ書籍の表題として一般的にも広く使用されている語であることが認められる。


 したがって,本願商標をその指定役務中語学に関連した役務に使用した場合,本願商標は,これに接する取引者・需要者をして,教授する語学,開催するセミナー,提供する出版物等の内容というように,提供する役務の質(内容)を表したものと認識させるに止まり,取引者・需要者が本願商標を何人かの業務に係る役務であると認識することはできないものと認めるのが相当である。


 そうすると,結局,本願商標は自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであって,商標法3条1項3号の「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当し,また,本願商標を前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条1項16号の「役務の質の誤認を生じるおそれがある商標」に該当するといわざるを得ない。』


 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。