●平成21(ワ)31686 不正競争行為差止等請求事件 不正競争(2)

 本日も、『平成21(ワ)31686 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成23年02月25日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110301164525.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点3−?(原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるか)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳、裁判官 坂本康博、裁判官 寺田利彦)は、


『3 争点3−?(原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるか)について

(1) 不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争とする一方,その括弧書きにおいて,当該商品の機能を確保するために不可欠な形態については同号による保護から除外される旨を規定する。


 これは,商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態を特定の者に独占させることは,商品の形態ではなく,同一の機能及び効用を有するその種の商品そのものの独占を招来することとなり,事業者間の自由な競争を阻害することになりかねないため,同種の商品の基本的な機能や効用を果たすために不可欠な形態については,同号の「商品の形態」から除外したものと解するのが相当である。


(2) 原告は,原告商品は,?ほぼ人の顔の大きさの丸みを帯びた四角形状の薄い金箔を,?目と口の部分を横長楕円型にくり抜き鼻の輪郭に沿って切れ込みを入れ,?台紙の上に接着させ,?金箔の上に薄紙を載せたという特徴的な外観を有するものであって,需要者に強い印象を与える特徴的な形状,色彩,光沢及び質感を有しており,このような原告商品の形態が不競法2条1項3号の「商品の形態」に当たると主張する。


 原告商品は,スキンケア用品としての顔パック(フェイスパック)のうち,顔面全体を1枚の薄い膜状のもので覆うタイプのもの(シートタイプ)と認められるが(甲87,弁論の全趣旨),このタイプの顔パックは,呼吸や視野を確保しつつ1枚の膜状のもので顔面全体を覆うことによってパックをするという商品の性質,機能から,a.全体形状を顔の輪郭に合わせた丸みを帯びた略四角形状とし,b.中心部で顔に載せたときの鼻の位置に当たる部分に鼻の輪郭に沿って切れ込みを入れ,c.顔に載せたときの目の位置に当たる部分(左右対称に2か所)を目の形状に合わせて横長楕円形状にくり抜き,d.顔に載せたときの口の位置に当たる部分を口の形状に合わせて横長楕円形状にくり抜いた形状を不可避的に採用することになる(甲87,乙1の1,7,8の1〜6,24の1〜4,弁論の全趣旨)。


 そうすると,原告が主張する原告商品の形態のうちの?の「ほぼ人の顔の大きさの丸みを帯びた四角形状」及び?の「目と口の部分を横長楕円型にくり抜き鼻の輪郭に沿って切れ込みを入れ」は,同種の商品の基本的な機能や効果を果たすために不可欠な形態であるから,不競法2条1項3号で保護される「商品の形態」には当たらない。


 また,?及び?の「金箔」は,パックの素材として「金箔」を選択したという機能及び効用に関わる事項であるところ,従来からパックに金箔(いわゆる「エステ箔」)が使用されていたことは上記2(2)のとおりであり,このような一般的な素材の選択自体を不競法2条1項3号の「商品の形態」ということはできない。


 ?の「台紙」及び?の「薄紙」は,素材として金箔を採用したことから,商品を保護するため,すなわち,商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならないと認められるから,不競法2条1項3号による保護から除外されるというべきである。そして,?の「接着」は,これが商品の形状に表れる特徴となっているとは認められないから,不競法2条1項3号の「商品の形態」ということはできない。


 原告は,原告商品が特徴的な色彩,光沢及び質感を有していることも「商品の形態」であると主張するが,これは素材として金箔を採用したことによる金箔独特の色彩,光沢及び質感をいうものにすぎず,素材として金箔を採用すること自体はパック素材の選択という商品の機能及び効用に関わる事項であり,素材として金箔を採用すれば不可避的に金箔独特の色彩,光沢及び質感を有することになるから,これらの点も不競法2条1項3号による保護から除外されるというべきである。


 また,原告は,原告商品は従来の顔パック製品の一種ではなく,金の性質を利用した整肌効果等の機能を持つ各種金箔美容商品に属する商品であり,金箔美容商品には様々な形態があるため,原告商品の形態は当該商品の機能を確保するために不可欠な形態とはいえないと主張するが,原告商品が金箔を素材とする美顔パックであり,スキンケア用品としての顔パック(フェイスパック)の一種であることは,上記2(3)ア(ア)の新聞・雑誌記事における紹介や,原告自身がこのことを前提に原告商品のプレゼンテーションをしている(甲87)ことなどから明らかであり,原告の上記主張を採用することはできない。


(3) 以上によれば,原告が主張する原告商品の形態は,不競法2条1項3号で保護される「商品の形態」に当たると認めることはできない。


 よって,原告の不競法2条1項3号の不正競争に基づく請求は,その余の点について検討するまでもなく理由がない。』


 と判示されました。


 なお、不競法2条1項3号は、

『三  他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為 』

 です。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。