●平成22(行ケ)10135 審決取消請求事件 特許権「植栽用土壌の活性

 本日は、『平成22(行ケ)10135 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「植栽用土壌の活性化方法」平成23年02月24日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110225101456.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)における本件発明の認定が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 荒井章光)は、


『1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)について

ア本件明細書(甲1)の記載を要約すると,以下のとおりとなる。


 ・・・省略・・・


イ本件発明の技術内容

 以上の本件明細書の記載によると,本件発明は,人体に悪影響を及ぼすガスに代わり,人畜無害な特定濃度の二酸化塩素水溶液を一定範囲の土壌に撒布するという簡易な方法によって,植栽に有効な細菌及び放線菌については,有効量,土壌中に残存させるとともに,植栽に有害な糸状菌だけを選択的に著しく減少させて,土壌を活性化することをその技術内容とするものである。


ウ「選択的に除菌」の意義について

 上記イの本件発明の技術内容によると,特許請求の範囲における「土壌中の微生物を選択的に除菌」の技術的意義は,植栽に有効な細菌及び放線菌を有効量,土壌中に残存させるとともに,植栽に有害な糸状菌だけを選択的に著しく減少させることを意味するものと理解することができる。


 この点について,原告は,本件発明の特許請求の範囲には,「細菌,放線菌等の菌は有効量残存させ,糸状菌等の植栽に有害な菌は著しく減少させる」旨の記載がない以上,特許請求の範囲に記載されている「選択的に除菌」について,本件明細書全体の記載を参酌して,本件審決のように限定的に解釈することはできず,むしろ,菌を死滅させる場合を含む広い意味において理解すべきであるなどと主張する。


 しかしながら,本件発明の特許請求の範囲には「選択的に除菌」と記載されているところ,本件審決は,本件発明について,その記載のとおり認定しているにすぎないのであって,本件発明と引用発明との対比の際,特許請求の範囲の文言の技術的意義を明らかにするために,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された技術的事項を参照してそのように認定することに問題はない。


 とりわけ,本件発明が植栽用土壌の活性化方法であることに照らせば,「選択的に除菌」という構成の技術的意義を検討するに当たり,「選択」という用語自体から,植栽用の土壌を活性化させるため,有益な菌は残存させ,有害な菌については,これを選んで除菌する技術思想が示唆されているということができるから,本件審決は,その意義を明らかにするため,本件明細書の記載を参照しているにすぎないことが明らかである。


 原告の主張は,本件発明の特許請求の範囲に記載されている「選択的に除菌」について,これを「菌を死滅させる場合を含む広い意味で」理解し得ることが一義的に明確であることを前提とするが,「選択的に除菌」の意味を全ての菌を死滅させる場合を含む概念と理解することは相当ではなく,原告の主張は,その前提において誤りがあるから,これを採用することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。