●平成22(行ケ)10263 審決取消請求事件 特許権「情報出力装置」

 本日は、『平成22(行ケ)10263 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「情報出力装置」平成23年02月03日 知的財産高等裁判所』 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110207135601.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由(面接を行わないとした判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『原告は,審決について,その内容は争わず,審判手続における違法を,取消事由(面接を行わないとした判断の誤り)として主張する。


 しかし,原告が審判官との面接を希望したのは,審判官が補正は不適法であるとした平成20年10月15日作成の前置報告書の指摘(甲8)は認めつつも,なお,補正後の請求項を前提として分割出願を希望しその機会を与えてもらうためであったところ(甲9),本件訴訟においても,本件補正が不適法であること自体について原告は争っておらず,これが適法であることを裏付けるべき主張立証もないので,本件補正を前提としての本願発明の分割出願が適法になるものということはできない。そうである以上,審判官が上記内容についての面接要請に応じなかったことをもって,審判手続に違法があるとすることはできない。


 原告が主張する審決取消事由に理由がないことは以上のとおりであるが,なお原告が主張しているところにかんがみ,以下の点を補足する。


 すなわち,原告は,特許庁が発行しているガイドライン(乙1)中には,面接等の要請に応じることができない12の事例が挙げられているところ,原告の面接要請は,いずれの事例にも該当しないから,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断は,ガイドライン違反であると主張する。


 しかし,ガイドライン特許庁が定めている基準であって,面接の機会を与えられなかったことが違法となるか否かは本件訴訟で独自に判断すべきである。そして,本件審判手続において面接を行わなかったことをもって違法とすべき事実関係を認めることができないことは,冒頭に説示したとおりである。


 拒絶査定不服審判は,書面審理により行われるものである(特許法145条2項)ところ,審判手続において,審判合議体と請求人側との密な意思疎通を図り,それにより審理の促進に役立てるために面接が実務上行われているとしても(ガイドライン1.1(乙1)参照。),それは,特許法上規定された手続ではなく,請求人に対するいわゆる行政サービスの性質を持つものである。そうすると,拒絶査定不服審判の審理に際して面接を行うか否かは,個々の事案において審判合議体の裁量に属する事項であり,特段の事情のない限り,面接を行わなかったことが審判手続上の違法となるものではない。そして,上記説示したところによれば,本件においてこの特段の事情はない。


 原告は,さらに,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断が,補正後の請求項に係る発明も含め,本願発明の明細書及び図面中の発明について多数の特許を取得することを予定した原告の期待権を侵害するものであると主張する。


 しかし,原告が主張する期待権侵害も,面接を受けられなかったことについての違法をいうものに帰するのであって,前記のとおり,面接を行わなかった審判合議体の判断を違法とすることはできないのであるから,原告のこの主張も,採用することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。