●平成22(行ケ)10104 審決取消請求事件 特許権「洗浄剤組成物」

 本日は、『平成22(行ケ)10104 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「洗浄剤組成物」平成22年11月10日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101111114300.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、引用発明2を引用発明1へ適用しての進歩性の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知的高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 荒井章光)は、


『(5) 引用発明2等の引用発明1への適用

ア上記(1)のとおり,引用発明1は,N,N−ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸のナトリウム塩を組成物とする金属イオン封鎖剤組成物であるところ,このN,N−ビス(カルボキシメチル)グルタミン酸のナトリウム塩は,引用発明2におけるアスパラギン酸−またはグルタミン酸−N,N−二酢酸と成分において共通するものである。


イそして,引用発明1と引用発明2とその技術分野をみてみると,引用例1には,金属イオン封鎖剤組成物をその金属イオン封鎖組成物が硬表面に付着した汚れ自体に作用して洗浄する旨の記載はないのに対し,引用発明2は,アルカリと錯体形成剤とを硬表面の洗浄のための有効成分として用いるものであるとの違いがあるが,上記(3)のとおり,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることは周知技術であるということができるものであるから,引用発明1も,洗浄作用という技術分野に係る発明であって,引用発明2と技術分野を同じくするものということができる。


ウしかしながら,引用発明2は,グリコール酸ナトリウムを組成物とする金属イオン封鎖剤組成物の発明ではなく,また,引用発明1も,その発明に係る金属イオン封鎖剤組成物には,グリコール酸ナトリウムが含まれているとはいえ,前記(1)ウのとおり,当該金属イオン封鎖剤組成物にとって,グリコール酸ナトリウムは必須の組成物ではなく,かえって,その必要がない組成物にすぎないのである。


 そうすると,一般的に,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることとし,その際に引用発明1に引用発明2を組み合わせて引用発明1の金属イオン封鎖剤に水酸化ナトリウムを加えることまでは当業者にとって容易に想到し得るとしても,引用発明1の金属イオン封鎖剤組成物にとって必須の組成物でないとされるグリコール酸ナトリウムを含んだまま,これに水酸化ナトリウムを加えるのは,引用例1にグリコール酸ナトリウムを生成する反応式(2)の反応が起こらないようにする必要があると記載されているのであるから,阻害要因があるといわざるを得ず,その阻害要因が解消されない限り,そもそも引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けもないというべきであって,その組合せが当業者にとって容易想到であったということはできない。


2 結論

 以上の次第であるから,その余の取消事由について検討するまでもなく,本件発明に進歩性がないとした本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。