●平成22(行ケ)10051 審決取消請求事件 特許権「振動発生装置」(2)

 本日は、先日取り上げた、『平成22(行ケ)10051 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「振動発生装置」平成22年10月20日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101021102928.pdf)について取り上げます。


 本件では、取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)についての判断も、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人)は、

『2 取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)について

(1) 特許法36条6項1号及び2号違反について

ア 第2回補正による本願発明の請求項1の記載は,「胴体部の両側にシャフトを突出した振動モーターの両端に偏重心の分銅を備え,該分銅は振動モーター胴体部の中心点を中心とし,その両側のシャフトに略対称に取り付けた振動発生器において,発生する振動幅の設定は,該胴体部と分銅間の該間隔を変えて,発生する振動の大きさを決めて,該分銅の取り付け位置を設定し,又,その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする事を特徴とする振動発生装置。」というものである(甲3)。この請求項1には,「その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」とあるのみで,「軸方向の幅」が何の「軸方向の幅」を意味しているのか,明確であるとはいえない。また,本件明細書の発明の詳細な説明や図面に,「軸方向の幅」に関して参酌すべき記載もない。


イ原告は,当初明細書等の図1(c2)等の記載を根拠に「分銅の軸方向の幅」であるとも主張する。


 しかし,第2回補正においては,特許請求の範囲の全文,明細書の全文及び図面の全図を変更したものであり(甲3),当初明細書等(甲9)の記載を参酌することはできない。なお,第2回補正に係る本件明細書や図面に,「軸方向の幅」に関して参酌すべき記載もない。


ウよって,本願発明が特許法36条6項1号及び2号の要件を欠くとした本件審決の判断に誤りはない。


(2) 法17条の2第3項違反について

ア原告は,本件審決が第2回補正を新規事項の追加を理由に法17条の2第3項の要件違反とした判断について,「軸方向の幅」は「分銅の軸方向の幅」と理解するのが最も自然であり,「二分の一以上」とすることは,【0011】や図1(c2)の記載を含め,当初明細書等の全体から読み取り得る内容であり,当業者にも容易に理解できる旨主張する。


イ当初明細書等(甲9)には,「胴体部と分銅間の間隔」に関して,次の記載がある。


 ・・・省略・・・


ウ当初明細書等には上記の事項が記載されているが,当初明細書等に,胴体部と分銅間の間隔が,何の軸方向の幅であるか特定する記載があるとはいえず,そして,この間隔が,何らかの物の軸方向の幅の2分の1以上であることを特定する記載があるとはいえない。


 なるほど,原告主張のように,当初明細書等の記載事項によると,胴体部と分銅間の間隔を大きくするほど発生する振動を大きくすることができると理解できるとしても,上記間隔と「軸方向の幅」とを関係付ける技術的事項は何ら記載されておらず,しかも,その「二分の一以上」とすることが記載されているとはいえない。


 そして,図面を参照したとしても,上記「軸方向の幅」が分銅の「軸方向の幅」であることや,上記間隔がこの幅の「二分の一以上」であることを,当業者が当然に理解できるものとはいえない。


エ そうすると,「その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」ことを含む第2回補正は,新たな技術的事項を導入するものであり,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえないから,本件審決が,第2回補正が法17条の2第3項に違反すると判断した点に誤りはない。


(3) 小括

以上によれば,取消事由2は,理由がない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。