●平成21(ワ)25783 販売差止等請求事件 商標権 民事訴訟

 本日は、『平成21(ワ)25783 販売差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年10月21日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101025113150.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標権等に基づく販売差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点1−1(本件商標権の侵害行為の有無)および争点2−1(不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為該当性)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 大西勝滋、裁判官 上田真史)は、


『1 争点1−1(本件商標権の侵害行為の有無)について

 原告は,被告各標章は本件登録商標の類似の商標に該当し,被告による被告商品の包装箱に被告標章1を付した被告商品の販売行為並びに被告ウェブサイト及び被告カタログに被告商品の「商品名」として被告標章2を表示する行為は,登録商標に類似する商標の使用(商標法37条1号)として,本件商標権の侵害を構成する旨主張する。


 これに対し被告は,被告各標章と本件登録商標とは類似せず,また,被告各標章は被告商品の包装箱,被告ウェブサイト及び被告カタログにおいて本来の商標としての使用(商標的使用)がされているとはいえないから,被告の上記各行為は,本件商標権の侵害を構成しない旨主張する。


 ところで,商標の本質は,当該商標を使用された結果需用者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの(商標法3条2項)として機能すること,すなわち,商品又は役務の出所を表示し,識別する標識として機能することにあると解されるから,商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には,形式的には同法2条3項各号に掲げる行為に該当するとしても,当該行為は,商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である。


 そこで,本件の事案にかんがみ,まず,被告各標章が被告商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているか,すなわち,本来の商標としての「使用」(商標的使用)がされているかどうか(争点1−1(2))について判断することとする。


 ・・・省略・・・


エ 被告カタログにおける被告標章2の使用態様等

 被告カタログには,別紙7−1及び7−2の各写真に示すように,?表表紙の中央上部に,「テンピュール®総合カタログ」,「2009Autumn-2009Winter」との文字が,同左側に,90°回転させた「TEMPUR」の文字が,同下部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載され,?被告商品を紹介している部分において,上から順に,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章,被告商品の写真,「スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。」との説明文が記載され,?裏表紙の中央部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されている(甲43)。


 そして,?被告標章2から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること(前記(3)),?「テンピュール」の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたこと(前記(4))からすると,上記?の「テンピュール®総合カタログ」の文字は被告カタログに掲載されている商品が被告が販売する商品であることを識別させるために使用されているものと認識できること,以上の?ないし?に照らすならば,被告カタログに接した一般消費者においては,被告商品を紹介している部分に記載された被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章について,上記?の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起させるものではないものと認められる。


 そうすると,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章が被告カタログにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告カタログにおける被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章の使用は,本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。


(6) まとめ

 以上のとおり,被告商品の包装箱等における被告各標章の使用は,本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないから,その余の点について判断するまでもなく,被告による被告商品の包装箱に被告標章1を付した被告商品の販売行為並びに被告ウェブサイト及び被告カタログに被告商品の「商品名」として被告標章2(これと構成が同一で,文字色が黒色の文字標章を含む。)を表示する行為は,「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)に該当するものと認められない。


2 争点2−1(不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為該当性)について


(1) 原告は,被告商品の包装箱,被告ウェブサイト及び被告カタログに表示された被告各標章は,被告の商品であることを示す商品等表示(不競法2条1項1号,2号)に該当する旨主張する。


 ところで,不競法2条1項1号の「商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)」とは,商品表示(商品を表示するもの)及び営業表示(営業を表示するもの)をいい,この商品表示は,商品の出所を他の商品の出所と識別させる出所識別標識としての機能を有するものであることを要するものと解される。また,同項2号の「商品等表示」も,これと同様に解される。


 そこで検討するに,前記1で認定したとおり,被告商品の包装箱等における被告各標章は被告商品の出所表示機能・自他商品識別機能を果たす態様で用いられているものと認められないことに照らすと,被告商品の包装箱等における被告各標章は,被告商品の出所識別標識としての機能を有するものとはいえないから,商品等表示に該当するものと認めることができない。


(2) したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告主張の被告による被告各標章を使用する行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為のいずれにも当たらないというべきである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。