●平成21(行ケ)10400 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10400 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「インターネットを利用した顧客支援システム」平成22年10月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101014104615.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由(補正却下の誤り)における新規事項の追加についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『3 取消事由(補正却下の誤り)について


(1) 原告は,審決がした補正却下決定が誤りであると主張し,その理由として,以下のとおり述べる。

 すなわち,原告は,本件補正事項のうち,前記2記載部分に関して,ダウンロードページのモデルメニュ画面部(図10)でオペレータがモデル名を選択すると,選択したモデルについての必要な各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなど,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを選択するためのメニュを含む細部項目メニュ画面が,細部項目メニュ出力部によって表示され,ダウンロードするプログラムに対応する装置名が表示されるから,パソコン関連ソフトウェアから必要なファイル名をクリックすることによって,ダウンロードするソフトウェアの選択が実行されるとし,仮に,説明欄に表示されている意味が分からないときには,細部項目画面の下段にある主メニュの中から,使用案内ボタンをクリックして,使用案内ページに移動し,提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類や各種のグラフィック及び文字情報を参照することにより,装置の実装されている位置や装置の外観などを知ることができ,不明であった意味を解明し,この解明を基に,必要なファイル名をクリックすることによってダウンロードするソフトウェアの選択を実行すると主張する。


(2) 上記の原告主張は,前記2で認定した当該補正事項についての解釈,すなわち,ダウンロードページの「モデルメニュ画面部」により選択したパソコンモデルについて,「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に,「使用案内サービス部」は,少なくとも「前記選択されたパソコンモデル」についての「パソコンモデル本体のモデル種類」,「パソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報」,「パソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報」,及び「パソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報」を提供できることが必要であるとする解釈の範囲で合致するものといえる。


 しかし,上記の補正事項を実現するためには,ダウンロードページの「モデルメニュ画面」にて選択したパソコンモデルの種類を,使用案内ページにおいても認識し,ダウンロードページの「細部項目メニュ画面」から,選択したパソコンモデルの仕様やパソコン関連の各種装置を選択する使用案内ページの「細部項目のメニュ画面」に直接移動して表示することが,技術的に必要であり,また,使用案内ページからダウンロードページに復帰する際においても,使用案内ページにて表示していたパソコンモデルの種類,又は,それ以前の「モデルメニュ画面」にて選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存して,ダウンロードページの前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する「細部項目メニュ画面」に直接移動して表示をすることが必要となるものと認められる。


(3) ところで,前記1で判示したとおり,当初明細書及び図面には,ダウンロードページの細部項目メニュ画面中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,明確な記載が認められず,当初明細書及び図面の記載を総合すると,使用案内ページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。


 また,ダウンロードボタンをクリックした場合も,ダウンロードページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,当初明細書及び図面には,選択したパソコンモデルに対応した他の画面に直接移動することを示唆する記載も見当たらない。


 したがって,上記の補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。


第6 結論

 以上によれば,原告の主張する取消事由は,理由がなく,本件補正を却下した審決の判断に,誤りはない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。