●平成21(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「外面が収束しかつ内部チャネルが狭くなっている曲がり水晶体超音波吸引針」平成22年09月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101001105609.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由4(容易想到性判断の誤り)につての判断が参考になるかと思います。
 

 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『5 取消事由4(容易想到性判断の誤り)について

 原告は,審決が,「本願発明の効果も,当業者が予測できた範囲内のものであり,格別のものではない。したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。」(5頁28行〜31行)と判断したことは,誤りであると主張し,本願発明では,「曲がり部」を有し,かつ,「細長外面」が「直線部」と「排出ポート」との間に「直径方向に狭くなるように構成された部分」を有する構成により,従来の超音波吸引装置よりも大きな空洞力又は空洞パワーが形成され,より効率的に患部組織を破壊できるという顕著な効果を奏すると主張する。


 しかしながら,審決において,引用発明の認定並びに本願発明との一致点及び相違点の認定に誤りはないことは,前示のとおりであり,引用発明に審決認定の周知技術を適用した構成においても,「曲がり部」を有するのは当然であり,それに加えて,「細長外面」が「直線部」と「排出ポート」との間に「直径方向に狭くなるように構成された部分」を有するものと認められる。


 このように本願発明と同様の構成が,当業者が容易に想到し得たものである以上,当該構成から生じる効果についても,通常,当業者が容易に予測できる範囲内のものと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。


 また,原告は,本願発明では,「細長チャネル」が「直線部」と「排出ポート」との間に「直径方向に狭くなるように構成された部分」を有する構成により,針の超音波振動によって破壊した患部組織が針内部に急激に吸入されること,すなわち,「瞬時の流れサージ」が防止されるという顕著な効果を奏すると主張する。


 しかしながら,前示のとおり,引用発明に周知技術を適用した構成自体を,当業者が容易に想到し得たものである以上,当該構成から生じる原告主張の上記効果についても,当業者が容易に予測できる範囲内のものと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。


 したがって,原告の主張する作用効果によって,本願発明の進歩性を裏付けることはできない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。