●平成22(行ケ)10020 審決取消請求事件 特許権「地下構造物用蓋」

 本日は、『平成22(行ケ)10020 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「地下構造物用蓋」平成22年09月22日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100924142531.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(本件補正発明2についての審理不尽)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人)は、


『2 取消事由2(本件補正発明2についての審理不尽)について

(1) 原告は,特許庁が本件補正発明2の特許要件について判断をしていないことについて,審理不尽の違法がある旨を主張する。


(2) しかしながら,特許法は,1つの特許出願に対し,1つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて1つの特許が付与され,1つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。


 このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。


 そして,このことは,特許法49条(平成14年法律第24号による改正前のもの),51条の文言のほか,特許出願の分割という制度の存在自体に照らしても明らかである(最高裁平成19年(行ヒ)第318号同20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。


 これを本件についてみると,本件補正発明2は,本件補正発明1とは相当に異なる技術思想を含むもののようであるから,たとえ前記のとおり本件補正発明1が容易想到なものと判断されるとしても,その取扱いには一定の慎重さが期待されたとはいえるものの,本件補正発明1が容易に想到し得るものである以上,これと同じ出願に係る本件補正発明2について特許要件の判断をしなかったからといって,このことを直ちに違法であるとまで断ずることはできない。


(3) したがって,本件補正発明2についての判断に審理不尽の違法があるという原告の主張は採用できない。


3 結論

 以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請
求は棄却されるべきものである。』


と判示されました。


 なお、本件で引用している最高裁判決は、

●『平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源事件」平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080710145411.pdf

 です。


 詳細は、本判決文を参照してください。