●平成22(行ケ)10038審決取消請求事件 特許権「納豆菌培養エキス」

 本日は、『平成22(行ケ)10038 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「納豆菌培養エキス」平成22年09月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100916095157.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、相違点1に係る容易想到性の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 荒井章光)は、

『(4) 相違点1に係る容易想到性の判断

 上記(3)のとおり,引用発明2には,本件特許の出願時点において,食品である納豆に通常含まれるビタミンK2の含有量を少なくすることで,血栓症の発生を予防する抗凝固療法を行っている患者や血栓症の危険性のある人にも安心して食することができる食品を提供するとの本件発明1と同様の課題及びその解決を図ることが示されているということができる。


 そうすると,ナットウキナーゼとビタミンK2とが含まれた納豆菌培養液を含むことを特徴とする液体納豆を含むことを特徴とする食品である引用発明1において,引用発明2を適用して,ビタミンK2の含有量を少なくしようと試みることは,当業者であれば容易に想到することができるということができる。引用発明1において,引用発明2に開示されている納豆に通常含まれるビタミンK2の含有量を少なくするとの課題の適用を阻害する事由を見いだすことはできない。


 なお,本件発明1における「納豆菌培養液またはその濃縮物」の技術的意義として,本件審決が認定するように,少なくとも納豆菌からの分泌物及び培地成分の残渣など通常の納豆菌培養液由来の種々の栄養分が有意な量含まれているものと解釈されるとしても,引用発明1も,納豆菌とその代謝産物である人体に有益な機能性物質とを含有する納豆菌培養液とからなることを特徴とする液体納豆を提供するものであるから,これに引用発明2を適用し,ビタミンK2の含有量を少なくしようと試みたものについても,納豆菌からの分泌物及び培地成分の残渣など通常の納豆菌培養液由来の種々の栄養分が有意な量含まれているものと認められ,上記のとおりの本件発明1における「納豆菌培養液またはその濃縮物」の技術的意義があるとしても,そのことをもって,上記の容易想到性の判断に影響を与えるものではない。

2 結論

 以上の次第であるから,取消事由1,2について特に判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。